0.浮気・不倫相手は1人とは限りません

複数人と浮気

浮気・不倫の相手は1人とは限りません。複数の人と同時に、もしくは次々と相手を変えて不貞行為を行っているケースも少なくありません。

複数の人と同時にお付き合いをしている場合は当人の本気度が低く、「不倫」ではなく、「浮気」とよぶ場合もありますが、いずれにしろ、慰謝料を請求することができます。

では、複数の浮気・不倫相手に対して慰謝料を請求する場合、慰謝料をどのように算出し、請求することができるのでしょうか。

また、浮気・不倫相手が裁判に訴えられた場合、「自分以外にも浮気・不倫相手がいます!」という言い訳は認められるのでしょうか。

今回のコラムでは、相手が複数いた場合の慰謝料請求について解説していきたいと思います。

1.浮気・不倫相手が複数いた場合の慰謝料の計算方法とは

たとえば、慰謝料を300万円と仮定した場合、3人の浮気・不倫相手に対して請求できるのはどちらの場合でしょうか。


(1)1人ずつ300万円の請求、合計300×3=900万円の慰謝料を請求する。

(2)慰謝料300万円を、それぞれ3人で案分して100万円ずつ支払わせる。


まず、大前提として、慰謝料は浮気・不倫相手の全員に対して請求することができます。

不貞行為の期間が長かったり、頻度が多かったりした相手など、もっとも悪質な相手のみ選んで請求をしても構いませんし、全員に対して請求をすることも自由です。

次に問題となるのは、複数の浮気・不倫相手に対して慰謝料を請求する場合、相手の人数が多ければ多いほど、合計金額が増加するのかという点です。

この点を明確に論じた裁判例はあまり見かけませんが、多くの裁判例では、相手の人数によって慰謝料は単純増加しないという考えのもとで判断されています。つまり、上記(2)の考え方です。

この考え方は、浮気や不倫の慰謝料の性質やその算出方法から読み取ることができます。

浮気や不倫の慰謝料は、平穏な夫婦生活を害されたことによる精神的苦痛を金銭で補う性質を持っています。

浮気・不倫相手が1人であろうと、複数であろうと、夫婦生活が害された事実には変わりありません。そのため、相手が複数いただけでは、慰謝料増額の要因にはなりません。

また、慰謝料をどのように算出するかという点からも、相手が複数いただけでは、慰謝料は増額しないということがわかります。

浮気や不倫の慰謝料は、①不貞行為の期間や内容を中心に、②夫婦の婚姻期間、③不倫発覚後の婚姻関係、④夫婦の子どもの有無、⑤不倫相手の状況などを基準に算出されます。

現在の慰謝料算定の実務においては、相手の人数は慰謝料算定の直接の要素とはされていないため、慰謝料が単純増額するとはいえないのです。

実際の裁判例でも、婚姻期間が5年間あった元夫に対して、夫がハプニングバーで複数の女性と浮気・不倫関係を持ったとして慰謝料を請求した事例では、200万円というごく平均的な慰謝料の金額が認められ、複数の不倫相手がいたことは慰謝料算定の上で明示されませんでした(東京地裁平成30年1月12日判決)。

2.慰謝料が増額される可能性もあります

慰謝料が増額

しかし、「浮気・不倫相手が妊娠していた」、「その相手との間に子どもがいた」、「不倫期間が長期間であった」場合など、浮気・不倫の状況が悪質である場合には、慰謝料が増額される可能性があります。

これと同じように、浮気・不倫相手が1人ではなく複数いたこと自体が悪質と判断され、夫婦の関係や家庭もその分だけ悪化したり、配偶者に与える精神的なダメージが大きくなるといえなくもありません。その場合は、相場を上回る慰謝料が認定される可能性もあります。

以上の通り、慰謝料を請求する場合は、ただ単に「浮気・不倫相手が複数いた」と主張するだけではなく、そのことにより、夫婦関係や家庭生活に悪影響が生じたことや多大な苦痛を味わったとことなどを、より具体的に主張していく必要があるでしょう。

3.「他にも浮気・不倫相手がいたのに!」との主張は認められるのか?

では、浮気や不倫が発覚して、慰謝料を請求された場合、「自分以外にも不倫相手がいる!」との抗弁(言い訳)は認められるのでしょうか。もし認められれば、慰謝料が減額される可能性があります。

この点、裁判所の判断は分かれている状況です。

不倫相手が複数いることによる被告の減額の主張が認められなかった事例としては、東京地裁平成22年7月6日判決、東京地裁平成28年11月25日判決などがあります。

これらの判決では、「被告以外に不倫相手が複数いたとしても、不貞行為を正当化する理由にはならず、慰謝料を支払う責任を減少させるものではない」と判断されました。

その一方で、東京地裁平成25年4月17日判決では、不倫相手が被告以外にも複数いたことが、被告に対する慰謝料減額の要素となりました。

そのほか、妻からの不倫相手に対する慰謝料請求において、夫が他の複数の女性と浮気・不倫をしており、すでに他の不倫相手から慰謝料が支払われていることが減額の要素となった事例もあります(東京地裁平成15年9月16日判決)。

4.慰謝料を裁判で請求するときの注意点

これまでいくつかの裁判例を紹介してきましたが、裁判所は1つの統一的な見解を出していないのが現在の実務運用です。

しかし、慰謝料を請求して裁判になった場合、不倫相手が複数いても、人数にしたがって比例的に慰謝料の金額が増えることは、まず認められないでしょう。

そのため、裁判によって解決を図る場合は、「不倫相手が2人だから200万の慰謝料が2倍の400万円に」、「3人いたから3倍の600万円に」とはなりません。

人数の多寡を問わず、浮気・不倫の慰謝料の算定要素に当てはめながら検討していくことになります。

実際の裁判手続では、一つ一つの行動や発言が、自身にとって思わぬ不利な立場となってしまうことがあります。相手方も様々な理由を付けて、全力で反論してくることでしょう。

そのため、浮気・相手に訴訟を起こして裁判にしようとしている場合、相手方とどのように戦うべきなのか、早めに弁護士に相談した方がよいでしょう。

5.示談交渉であれば、複数からの慰謝料の獲得が期待できます!

一人ひとりに示談交渉

以上までの説明は、あくまでも裁判になった場合、裁判所がどのように判断するかという視点で解説しました。

しかし、裁判ではなく、示談交渉(話し合い)で慰謝料の獲得を目指す場合は、当事者に同意さえさせればよいのですから、これまで紹介した裁判例の考え方は、あくまで参考に過ぎません。

たとえば、A、B、Cと複数の浮気・不倫相手のそれぞれ個別に慰謝料を請求して示談交渉を行い、各200万円ずつ、合計600万円の慰謝料を支払わせるということも、理論上は考えられます。

つまり、示談交渉では、一般的な相場よりも高額な慰謝料を獲得できることになります。

ただし、このような進め方は相手方との交渉次第ですし、交渉途中で話し合いが決裂し、裁判によらなければ解決できない方針に進むかもしれません。そして、多くの時間や労力などの負担、何よりも交渉力が不可欠になります。

また、相手のそれぞれが、自分以外にも浮気・不倫相手がいたことが発覚してしまうと、交渉が難航することも予想されます。

弁護士法人アドバンスでは、豊富な実績があり、依頼者にとって妥当かつ有利となる慰謝料を算定し、最大限の慰謝料が獲得できるよう示談交渉を行います。どうぞ、遠慮なくご相談ください。

併せて、こちらのコラムもお読みください。

慰謝料の金額どう決まる?慰謝料の相場とは