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監修した弁護士

弁護士:大橋史典

弁護士法人プロテクトスタンス(第一東京弁護士会所属)
弁護士:大橋 史典

0.不倫相手ではなく、その親に慰謝料請求できるの?

不倫相手ではなく、その親に慰謝料請求できるの?

夫(妻)の浮気・不倫が発覚して、その相手に慰謝料を請求した場合、相手に支払い能力がなかったり、支払い姿勢が見られなくて、慰謝料を獲得できる可能性が低い場合があります。

特に、浮気・不倫相手が未成年の場合、その親に対して慰謝料を請求したいと考えるのではないでしょうか。

このコラムでは、相手の親に慰謝料を請求できるのか、弁護士が解説していきます。

1.慰謝料請求の当事者とは

浮気・不倫の不貞行為にもとづく慰謝料を請求する場合、配偶者とその相手の両方に請求することができます。
配偶者と不倫相手とは、共同不法行為(民法第719条)となり、連帯して損害を賠償する(慰謝料を支払う)義務を負うからです。

この点、不倫相手の親であっても、法律上は損害賠償責任を負いませんので、原則的に慰謝料を請求することはできません。

しかし、次のような場合、請求が認められることもあります。

2.請求できる可能性がある場合

慰謝料が認められるケースであった場合、交渉により慰謝料を増額できたり、裁判で増額が認められたりする可能性があります。
次に、慰謝料の増額が認められる主な事情について説明します。

2-1.自ら親に支払いや立替えをお願いした場合

不倫相手が自ら親に相談して、代わりに支払ったり、立替払いをしてもらったりすることになれば、親から慰謝料を受け取ることができます。

ただし、親に対して慰謝料の支払いを求めて交渉することはできません。
あくまでも、不倫相手に対して、資力のある親などの近親者に相談するよう促す程度に留める必要があります。

2-2.分割払いの連帯保証人になる場合

慰謝料の支払いは、一括払いが原則ですが、不倫相手に支払い能力が無い場合、一括で慰謝料を獲得することは難しいでしょう。

一括払いが難しい場合、当事者間で合意すれば、分割払いにすることも可能です。
そして、分割払いにより確実に慰謝料を回収するためには、連帯保証人を付けるという方法があります。

連帯保証人は、債務者本人と同じ返済義務を負いますので、両親や兄弟姉妹などがなるケースがほとんどです。
そのため、親が連帯保証人になる場合は、慰謝料の支払いを請求することができます。

2-3.不倫相手が未成年の場合

最近では、SNSを通じた出会いが増えたことなども影響し、未成年者が浮気・不倫相手となることも珍しくはありません。

未成年者との交渉が進んで示談する場合、未成年者本人のみとの間で示談書を取り交わしても、法定代理人である親権者の同意を得ておかなければ、後から取り消されてしまう危険性があります。

そのため、必然的に、親なども慰謝料の支払いに関する事実を知ることになりますし、本人の資力も期待できないケースが多いので、親からの支払いや立替払いが受けられる可能性があります。

なお、不貞相手の未成年者が18歳未満であれば、各地方自治体が定める青少年保護条例(淫行条例)に違反する可能性があります。
そのため、慰謝料を請求したことをきっかけに、配偶者が刑事責任に問われるリスクもあり得ますので、注意してください。

3.慰謝料を請求する際の注意点

慰謝料を請求する際の注意点

浮気・不倫の事実を知り、その相手を特定できたとしても、とても冷静になれず感情的になり、交渉がうまく進まない場合があります。
ましてや、相手の支払い能力が乏しい事実を知ったとしたら、なおさらではないでしょうか。

前述した通り、相手に慰謝料の支払い能力がなかったとしても、その親に慰謝料を請求することは原則的にできません。あくまでも、慰謝料の支払い義務は本人が負います。

4.まとめ

浮気・不倫の慰謝料請求において、相手に支払意思がない場合、あるいは、相手に支払能力が乏しい場合は、慌てたり、諦めたりする前に弁護士にご相談ください。
また、自分が子どもの慰謝料を代わりに支払うよう請求されてしまった場合も、同様です。

法律と交渉のプロフェッショナルである弁護士が、あなたの負担を軽減し、より良い解決を目指してくれます。