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監修した弁護士

弁護士:大橋史典

弁護士法人プロテクトスタンス(第一東京弁護士会所属)
弁護士:大橋 史典

0.「職場にバラす!」と脅されているけど、対処法はある?

不倫をしてしまった場合、さまざまなトラブルが引き起こされる可能性があります。そのひとつが、不倫相手による職場への暴露行為。

不倫相手と言い争いになったときや、別れるときに「そんな対応をするなら、職場に不倫をバラしてやる!」と言われるケースがよくあります。不倫を職場の人に知られてしまうことで、会社から処分されるのではないかと不安を感じる人もいるでしょう。

この記事では、不倫相手から、職場にバラすと言われたときの対処法を弁護士が詳しく解説します。

1.職場にバラされるリスク

不倫関係を職場にバラされてしまうことで、どのようなリスクが生じるのでしょうか。

1-1.解雇されるリスク

そもそも、不倫を理由に職場から解雇されることはあるのでしょうか。

原則として、不倫を理由に従業員を解雇することはできません。不倫はあくまでも従業員個人のプライベートな問題であり、業務とは切り離して考えるべきだからです。

しかし、不倫により職場の秩序が乱れたり、業務に支障が生じたりしている場合、会社から何らかの処分を言い渡される可能性があります。処分の内容として、就業規則によりますが、程度の順に次のような種類があります。

  1. 口頭注意(戒告)
  2. 始末書提出(譴責)
  3. 減給
  4. 出勤停止(停止中は無給が一般的)
  5. 降格
  6. 退職勧告(諭旨解雇)
  7. 懲戒解雇

懲戒解雇は最も重い処分なので、簡単に言い渡されるものではありません。しかし、不倫が職場に重大な悪影響を与えていたり、業務への支障により大きな損害が生じていたりすれば、解雇される可能性もゼロではないでしょう。

1-2.信頼を失うリスク

不倫をバラされた結果、解雇には至らなくても、不倫していることを同僚や上司などに知られることで、職場の人間関係に悪影響を及ぼすリスクがあります。

不倫相手が強い怒りを感じていれば、職場まで押しかけてきて大声で叫んだり、電話を何回もかけてきたりするかもしれません。もし、警察沙汰になってしまえば、職場の人からの信頼を完全に失ってしまうでしょう。

周囲から白い目で見られて居心地が悪くなり、結局は自主退職せざるを得なくなるかもしれません。

1-3.配偶者に知られてしまうリスク

職場に不倫を知られた結果、何らかの経路により思わぬ形で配偶者にまで伝わってしまうリスクもあります。配偶者に知られてしまえば、離婚や慰謝料を請求されてしまうような深刻な事態に発展するかもしれません。

2.「バラす」と言われた時の対処法

たとえ解雇はまぬがれたとしても、社会的な信用の低下や人間関係の悪化など多くのリスクを伴いますので、職場に暴露されることは回避したほうがよいでしょう。相手の主張を無視していると、状況がさらに悪化する可能性もあるので、きちんと対応することが重要です。

しかし、どのように対応するのが最善なのかは、相手が何を求めているかによって変わってくるでしょう。

ひょっとすると、不倫をバラそうとするのは、あなたを深刻な事態に陥れることを望んでいるのではなく、誠実な謝罪を求めているだけかもしれません。それなのに、「不倫をバラすと脅すなら、警察に通報する」などと冷たい態度で接すると、相手が自暴自棄になり、より危険な行動に移すかもしれません。

「職場にバラす」という言葉の裏に、相手が真に求めていることがあるはずです。感情的に対応するのではなく、何を求めているかを理解した上で、対応方法を冷静に判断するようにしましょう。

次に、対応方法の一例を解説していきます。

2-1.誠実に謝罪する

不倫相手があなたのことを本気で愛しているのに、配偶者と離婚することなく不倫関係を続けていたような場合、相手はとても傷ついているかもしれません。そして、あなたを陥れたいわけではなく、気を引きたくて「職場にバラしてやる」と口走ってしまうこともあるでしょう。

このようなケースでは、相手の悲しみにしっかりと向き合い、誠実に謝罪をすることが大切です。

2-2.犯罪にあたることを伝えて冷静に話し合う

職場に暴露すると脅す行為には「脅迫罪」が成立する可能性があります。

脅迫罪とは、脅迫相手となる本人やその親族に対し、害を与えることを告知した場合に成立する犯罪です。生命や身体だけでなく、自由や名誉、財産に対して脅迫する場合も脅迫罪にあたります(刑法第222条1項、2項)。

不倫を暴露することは、相手の名誉に害を与える行為に該当するため、職場にバラすと脅せば、脅迫罪になる可能性があるのです。

また、「職場にバラされたくないなら、慰謝料として500万円を支払え!」などと金銭を要求されれば、「恐喝罪」にあたります(同法223第条1項)。「バラされたくなければ仕事をやめろ!」などと、義務のない行為を強要された場合は「強要罪」が成立します(同法第249条)。

また、実際にバラしてしまう行為は、「名誉棄損罪」が成立する可能性があります。

名誉棄損罪は、不特定の人または多数の人に事実を知らせ、他人の名誉・社会的評価を低下させた場合に成立する犯罪です(同法第230条)。不特定多数の人がいる不倫相手の職場で不倫を暴露することは、人の名誉・社会的評価を低下させる行為に該当すると考えられます。

さらに、職場にバラされたことで不利益を受けた場合は、相手に損害賠償を請求することができます。

そのため、バラすと脅したり、実際にバラしたりする行為は犯罪にあたると説得し、バラされた場合は損害賠償を請求すると伝えてもよいでしょう。相手が冷静になって話し合いに応じてくれれば、思い直してくれるかもしれません。

2-3.実際に被害を受けたら警察に通報する

どれだけ説得しても相手がバラすと言い続けるため恐怖を感じたり、実際にバラされたりするなど、何らかの被害を受けた場合、警察に通報する選択肢も考えられます。

もし、つきまといや待ち伏せ、拒否しているのにしつこく電話やメールで連絡してくるといった被害を受けていれば、ストーカー規制法にも違反する可能性があります。

たとえば、次のような行為が、ストーカー規制法による規制の対象となります。被害が大きくなってしまう前に、警察に相談して対応を求めることが重要です。

  • つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつきなど
  • 監視していると告げる行為
  • 面会や交際の要求
  • 乱暴な言動
  • 無言電話・連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS・文書など
  • 汚物などの送付
  • 名誉を傷つける
  • 性的羞恥心の侵害
  • GPS機器等を用いて位置情報を取得する行為
  • GPS機器等を取り付ける行為など

出典:「ストーカー規制法」警視庁ホームページ

3.慰謝料を支払わなくてはいけないケースに注意

不倫による不貞行為の慰謝料は、自分や不倫相手の配偶者から請求されるものなので、不倫相手から金銭を要求されても支払いに応じる法的な義務はありません。前述したように、恐喝罪に該当する可能性もあります。

ただし、不倫相手の貞操権を侵害していたような場合は、貞操権侵害に対する慰謝料を請求される可能性があります。

貞操権とは、自分が性的関係を持つ相手を自分の意思で決めることのできる権利のことです。たとえば、次のようなケースに当てはまる場合、貞操権を侵害したことになる可能性があります。

  • 不倫相手に既婚者であることを隠し、独身または未婚であると偽っていた
  • 離婚する気がないのに、不倫相手に「もうすぐ離婚する」などと偽っていた

なお、いずれのケースについても、不倫相手に結婚への期待を抱かせたうえで、肉体関係に至った場合に貞操権を侵害したことになります。貞操権の侵害があった場合、不倫相手からの慰謝料の請求が認められることになります。

ただし、請求された慰謝料の金額が不当に高額な場合も多々あるため、支払いに応じてしまう前に減額を求めるなどの対応が重要です。

一方で、妥当な金額を算出したり、示談交渉により減額を認めさせたりするには、法的な知識が求められます。そもそも本当に貞操権の侵害に該当するかも含め、弁護士に相談することをおすすめします。

4.不倫相手とのトラブルは弁護士にご相談ください

確かに、不倫はしてはいけない行為です。しかし、不倫相手から「職場にバラす」などと脅され、金銭の要求などを受けても応じる必要はありません。

毅然とした態度で不倫相手に接することが重要ですが、自身で対応するのが難しい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士であれば、法的な視点から冷静に不倫相手との話し合いを進め、問題解決を目指してくれます。もし、警察への通報が必要と判断すれば、被害届を提出するためのサポートなどが可能です。

ほかにも、貞操権の侵害により慰謝料を請求された場合は、弁護士が妥当な金額を算出し、その金額を目指して不倫相手と交渉します。あなたの心を守るためにも、私たちと共に最善の解決策を見つけていきましょう。弁護士は味方であり続けます。

弁護士法人プロテクトスタンスには、不倫・浮気の問題に関して経験豊富な弁護士が揃っております。ご依頼いただければ、一日でも早く安心して過ごせる日が来るよう尽力いたしますので、まずはご相談ください。