目次
0.死亡後に慰謝料を請求する際は、注意点があります
「夫が亡くなって遺品整理をしていたら、不倫の証拠が見つかった…」
「妻の不倫は知っていたけど、離婚したくなくて追及できなかった。妻が亡くなったので、不倫相手に慰謝料を請求したい」
このように、配偶者の死亡後、不倫相手に慰謝料を請求したいという方もいらっしゃるでしょう。しかし、その際に注意していただきたい点がいくつかあります。
この記事では、配偶者の死亡後に慰謝料を請求する際に必要な条件や注意点を、弁護士が詳しく解説します。
1.慰謝料の請求は可能です
まず、法的には、配偶者の死亡後にも不倫相手に慰謝料を請求できます。
配偶者以外の異性と自由な意思にもとづいて肉体関係を持つことを不貞行為と呼び、この不貞行為は民法上「不法行為」に該当します(民法第709条)。不法行為を受けた被害者は、加害者に損害賠償を請求する権利があります。
そして、複数の人が一緒に不法行為をする「共同不法行為」となります。共同不法行為の被害者は、加害者のうちの誰に対しても損害賠償を請求することが可能です(同法第719条)。
つまり、不倫された場合、配偶者とその不倫相手のどちらに慰謝料を請求しても構いません。もし、配偶者が亡くなっていれば、不倫相手に請求することができます。
また、慰謝料を受け取った際に、税金を支払う必要があるか心配な方もいらっしゃるかもしれませんが、原則として慰謝料に税金はかかりません。詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
2.慰謝料が認められるために必要なこと
慰謝料が認められるには、次のような条件を満たしている必要があります。
2-1.肉体関係を示す証拠がある
そもそも不倫の慰謝料が認められるのは、あくまでも肉体関係(不貞行為)があった場合のみです。2人きりでご飯やドライブに行くことや、キスやハグという行為は不倫にあたると考える方も多いかもしれませんが、法的に慰謝料の請求は認められません。
そして、肉体関係があったことを示す証拠として、次のようなものがあります。
- セックスを記録した写真・動画・音声データ
- 肉体関係があったことが分かる内容のメッセージ
- ラブホテル入室時の写真・動画・GPS記録・領収書
- カーナビなどの履歴・地点登録(不倫相手の自宅やラブホテルなど)
これら以外にも、さまざまな資料が証拠になり得る可能性があります。複数の証拠を積み重ねることで、より有効な証拠として扱われると考えられるため、できるだけ多く集めることをおすすめします。
2-2.夫婦関係が破綻していなかった
不倫の証拠が揃っても、配偶者が不倫する前から夫婦関係が冷え切っていた場合、慰謝料は認められません。
不倫の慰謝料は、不倫によって夫婦の平穏な関係を侵害され、精神的な被害を受けたことに対して請求できます。そのため、長期にわたって別居しているなど、すでに夫婦関係が破綻していた場合、不倫で夫婦の平穏な関係が侵害されたとはいえないため、慰謝料は認められないでしょう。
2-3.「交際相手が既婚者だ」と不倫相手が知っていた
慰謝料が認められるには、「交際相手が既婚者」であることを不倫相手が知っていなければなりません。
たとえば、配偶者が結婚相談所や独身者限定のマッチングアプリに登録し、不倫相手に独身だと嘘をついていたケースでは、既婚者だと気付くことはできなかったとして、不倫相手への慰謝料は認められないでしょう。
ただし、休日に会ってくれない、自宅に呼んでくれないなど、注意すれば既婚者だと気付くことができたような事情があれば、請求が認められる可能性があります。
3.慰謝料を請求する際の注意点
条件を満たしていれば、慰謝料を請求する段階に移りますが、その際に注意していただきたい点を2つ解説します。
3-1.「求償権」を放棄させましょう
慰謝料を請求する際に忘れてはならないポイントとして、「求償権」があります。
求償権とは、共同不法行為に対する慰謝料を、本来負担するべき割合を超えて支払った場合、一緒に共同不法行為をした人に超過した分を請求できる権利です。負担する割合は責任の程度に応じて決まりますが、共同不法行為をしたのが2人なら、原則として5割ずつです。
たとえば、負担割合が5割のケースで、配偶者の不倫相手だけが100万円の慰謝料を支払った場合、不倫相手は求償権により、配偶者に50万円を請求できます。
配偶者が亡くなった場合、相続放棄をしないかぎり、配偶者の財産だけでなく義務も相続します。したがって、配偶者の「求償権による不倫相手からの請求に応じる義務」も相続することになるのです。
つまり、慰謝料を請求する側なのに、不倫相手から求償権を行使されると、慰謝料の半額程度を支払わなければなりません。もし、配偶者との子どもなど、ほかにも配偶者の相続人がいれば、法定相続分に応じ、その相続人も求償権を行使される可能性があります。
そこで、不倫相手に慰謝料を請求する際は、求償権を放棄させることが重要です。
しかし、不倫相手は損をすることになるので、簡単には放棄してくれないでしょう。求償権を放棄させるには、慰謝料を減額せざるを得ない可能性があることに留意してください。
また、不倫相手が求償権の放棄に応じても、実際に支払う段階で「放棄する約束なんてしていない」などと、不倫相手が主張するかもしれません。そのため、慰謝料の支払いについて定めた示談書(合意書)や公正証書などに、求償権を放棄する旨を記載しておくことをおすすめします。
3-2.慰謝料の請求にはタイムリミットがある
亡くなった配偶者の不倫が発覚し、「今は何もする気にならない。気持ちが落ち着いてから請求しよう…」という方もいらっしゃるかもしれません。
苦しいときに行動を起こすのは、とてもお辛いでしょう。しかし、慰謝料の請求には、タイムリミットがあることに留意してください。具体的には、次の期間が経過すると、時効の成立により慰謝料の請求が認められなくなります。
- 配偶者の不貞行為および不倫相手を知ったときから3年
- 最後の不貞行為から20年
このうち、「不倫相手を知ったとき」とは、慰謝料を請求できる程度に不倫相手の情報を特定できたタイミングです。単に不倫相手の顔を知っているくらいなら時効の期間は進みませんが、名前や住所、連絡先などまで把握していれば進んでいきます。
もし、時効の成立が迫っている場合、時効の期間を中断したり、延長したりするための手続きを進めましょう。
まず、裁判を起こして慰謝料を請求することで時効が中断し、進行していた期間がリセット(更新)されます。そして、判決で慰謝料が認められたり、裁判上の和解が成立したりすると、新たに10年の時効期間がスタートします。
また、裁判を起こさなくても、話し合いにより不倫相手が慰謝料の支払いを認めれば、時効期間がリセットされます。そして、支払いを認めた時点から3年が経過しなければ時効は成立しません。
裁判や話し合いの準備ができていなければ、不倫相手に内容証明郵便を送付して慰謝料を請求(催告)してもよいでしょう。催告の時点から時効が6か月間延長されるので、その間に裁判を起こしたり、話し合いによって支払いを認めさせたりすれば時効を中断できます。
なお、配偶者の不貞行為や不倫相手を知らなければ、いつまでも時効が成立しないわけではありません。不倫を知らないまま「最後の不貞行為から20年」が経過しても、慰謝料の請求が認められなくなるため注意しましょう。
4.弁護士に依頼するメリット
不倫相手が簡単に支払いに応じればよいのですが、なかなか応じないケースが多く、その場合は体力や時間を浪費してしまいます。
慰謝料請求を個人で行うにはハードルがあるため、まずは弁護士に相談し、解決に向けた対応を依頼することが望ましいでしょう。
ここでは、弁護士に依頼するメリットを4つご紹介します。
4-1.不倫相手の詳細な情報を把握できます
慰謝料を請求する際は、一般的に内容証明郵便を使います。内容証明郵便とは、郵便サービスのひとつで、郵便を出した内容や発送日、相手が受け取った日付などを郵便局が証明するサービスです。
内容証明郵便を利用するには、宛名に相手の名前や住所を記す必要がありますが、相手の情報が不十分な場合もあるでしょう。
弁護士であれば、「弁護士会照会」や「職務上請求」などの制度を利用し、電話番号やメールアドレス、自動車のナンバーといった情報から、住所や氏名の特定が可能です。
4-2.より高額な慰謝料を獲得できます
慰謝料の金額には、過去の裁判例に照らした一般的な相場はあるものの、個別のケースによって高額請求が可能な場合があります。
しかし、ご自身で対応する場合、どのくらい請求できるのかを適切に判断できず、本来なら認められるはずの金額を受け取れなくなる可能性もあります。この点、弁護士に依頼すれば、過去の交渉や裁判例などをもとに適切な金額を算出し、その金額を獲得できるよう交渉を尽力します。
4-3.裁判の対応を任せられます
相手方が不倫を認めずに支払いを拒否したり、大幅な減額を求めてきたりして交渉が決裂した場合、裁判を通じて解決を図ることができます。
裁判は証拠を揃えたうえで、裁判官に説明する必要があるなど、法的な専門知識が求められ、適切に対応できなければ不利な結果となってしまいます。弁護士であれば、依頼者の代理人として裁判に対応し、より高額な慰謝料の獲得を目指してくれるので、安心して裁判に挑むことができるでしょう。
4-4.精神的な負担が軽減します
不倫問題は、感情的に負担がかかります。苦痛を与えてきた相手と対峙し、交渉しなくてはいけないストレスは非常に大きいでしょう。
弁護士に依頼すれば、交渉や手続きを代理してもらえるため、相手と交渉する必要がなくなり、精神的な負担が軽減されます。
5.弁護士法人プロテクトスタンスにご相談を
愛する人が亡くなったのに、さらに生前の裏切りを知ってしまうのは、筆舌に尽くしがたい苦しみだと思います。不倫相手にきちんと慰謝料を払ってもらって一区切りをつけることで、強い気持ちで新たな人生を踏み出しましょう。
弁護士に相談するのは勇気がいるかもしれませんが、弁護士法人プロテクトスタンスでは、少しでも安心してご相談いただけるよう、次のような取り組みを実施しています。
- 浮気や不倫の慰謝料に関する弁護士へのご相談は初回60分無料
- チャットの質問に答えてわかる「慰謝料の無料診断」サービス
- 慰謝料の依頼に関する費用倒れのご不安を取り除くための返金保証制度
経験豊富な弊事務所までご相談いただければ、お気持ちに寄り添いながら、少しでも高額な慰謝料を獲得できるように尽力いたします。