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0.浮気・不倫をしても親権を諦める必要はありません

自分の浮気や不倫の不貞行為により離婚することになった場合、多くの方が「子どもの親権を配偶者に取られてしまうのではないか」と心配されます。実際に、配偶者から「絶対に子どもの親権は譲らない!」と主張されてしまうケースが多いようです。
配偶者以外の第三者と肉体関係を持ってしまったという不貞行為の罪悪感から「自分には親権を主張する資格がないのではないか」と考え込んでしまう方も少なくありません。
しかし、法的には、浮気や不倫と親権とは別の問題として扱われます。浮気や不倫により離婚の原因を作った側(有責配偶者)であっても、親権を得られる可能性は十分あります。
浮気や不倫の事実そのものが親権に直接影響を及ぼすことはないため、親権を諦める必要はまったくありません。もちろん、不倫によって子どもに悪影響を及ぼしている場合や、育児が疎かになっている場合は、親権の獲得が難しくなる可能性があります。
このコラムでは、不貞行為と親権との関係性、裁判所が親権者を決定する基準、不貞行為をした側が親権を獲得できないケース、親権者を決める流れなどのポイントを弁護士が詳しく解説します。
1.浮気・不倫と親権の関係
自分の浮気や不倫が原因で離婚する場合、多くの方は親権を配偶者に譲る必要があるのではと考えるかもしれません。しかし、浮気や不倫をしてしまった場合でも、親権を獲得できる可能性は十分にあるのです。
浮気や不倫による不貞行為(配偶者以外との第三者と自由な意思で肉体関係を持つこと)は、法的には不法行為に該当します(民法第709条、710条)。そのため、配偶者からの慰謝料の請求が認められます。そして、これは婚姻を継続しない場合、つまり、離婚をする際には問題となります。
また、不貞行為は裁判により離婚が認められる「法定離婚原因」の1つですので、配偶者が離婚を望む場合は、離婚そのものは避けられない場合が多いでしょう。
しかし、浮気や不倫はあくまでも夫婦間での問題であり、子どもの養育に関わる親権とは別の問題です。そのため、浮気や不倫が原因で離婚をする場合であっても、子どもと親との関係、つまり、離婚に際して夫婦のどちらが親権者となるのかということは、別問題として取り扱われます。
親権とは、子どもの養育を行う親の権利と義務のことです。離婚する夫婦は、どちらかが親権者になるか決める必要があります。これを「単独親権の原則」と呼びます(同法第819条1項)。
離婚協議において、親権者を話し合いで決めることができれば問題はありません。しかし、調停や審判などの家庭裁判所での手続きを通して、親権者を決める場合、裁判所は不貞行為の事実よりも、子どもの利益や養育環境(子どもの福祉)を重視して親権者を判断します。
そのため、自分の浮気や不倫が離婚に至る原因となった場合でも、裁判所から親権者として相応しいと判断されれば、親権を獲得できるのです。
2.裁判所が親権を決定する基準
前述の通り、話し合いにより離婚後の親権者が決まらない場合は、家庭裁判所による調停や審判、訴訟といった手続きで親権者を決めることになります。
裁判所は、離婚する夫婦のどちらが親権者になると「子どもがより幸せになれるのか」を基準に、さまざまな事情を総合的に考慮しながら判断します。たとえば、次のような要素が考慮されます。
2-1.子どもの年齢と意思
子どもが3歳くらいまでの幼児の場合、親権者の決定において母親がかなり有利となります。虐待をしたなどの致命的な要素が母親にない限り、母親が親権を獲得できる可能性が高いです。
これは、特に幼児期の子どもにとっては母親との結びつきがとても重要と考えられているためです(母性優勢の原則)。日本では昔から、女性が育児を担ってきたためでしょう。
ただし、近年では、母親を無条件に有利にするのではなく、母性的な立場にある側に親権を認めようとする傾向があるようです。母親が外で働き、父親が主夫として子どもを家で育てているというケースでは、父親が親権を勝ち取れる可能性もあります。
また、子どもの年齢が上がると、一概に母親が有利ということはなくなり、子どもの意思が尊重されます。
子どもの年齢が15歳以上の場合、子どもがどちらの親と暮らしたいかといった点を家庭裁判所が聴取しますので、子どもの意見が重視されます。15歳に達していなくても10歳程度であれば、意見が考慮される傾向にあります。
なお、親権者を決めるのは、子どもが未成年者の場合のみです。これまで成人年齢は20歳でしたが、民法改正により2022年4月から18歳に引き下げられました。そのため、現在は子どもの年齢が18歳に到達すると、親権はなくなります。
2-2.子どもの生活環境
裁判所は、子どもが現在の生活環境を大きく変えることなく、安心して暮らしを継続できるかを重視しています(継続性の原則)。そのため、今まで実際の育児(監護)をしてきた側の親が親権の獲得には有利となります。
そして、これは親子の関係だけでなく、離婚後の生活環境の変化も考慮されます。具体的には、離婚後の新しい生活において、子どもが通う学校や保育園などに転校はないか、転居により現在の住居や周囲の人間関係が損なわれてしまわないか、離婚後の養育環境は整っているか、といった点が考慮されます。
なお、子どもが2人以上いる場合、子どもごとに親権者を決めることもできますが、原則として同じ親権者を指定するべきと考えられています(きょうだい不分離の原則)。
2-3.その他の判断基準
ほかにも、裁判所は次のような基準から、夫婦のどちらを親権者とすることが子どもの幸せに繋がるか慎重に判断します。
- 親の心身の健康状況
- 子どもへの愛情と養育能力
- 親の経済的な安定性
- 今後の監護の見通し
- 監護補助者の有無
- 浮気や不倫による子どもへの悪影響の有無
2-4.浮気や不倫をした側が親権を取れないケース
これまで述べた事由をクリアしており、子どもに愛情を注ぎながら育ててきた監護実績があれば、親権を勝ち取ることができる可能性は高まるでしょう。
ただし、次のような状況では子どもへの悪影響があるとして、親権を獲得するのが難しくなります。
- 浮気や不倫により、子どもに嫌われてしまった
- 浮気や不倫に夢中になり、育児が疎かになった
- 相手と会う際に子どもを一緒に連れ回した
- 相手が子どもを虐待していた
つまり、浮気や不倫による離婚と親権者の決定は基本的に無関係ですが、これにより子どもに悪影響を及ぼした場合は、親権の争いに大きく影響します。
3.親権者になる流れ

離婚時に未成年の子どもがいる場合、夫婦のどちらかを親権者に決める必要があります(同法第819条1項:単独親権の原則)。そのため、親権者を定めない限りは、離婚することができません。
親権者を決める際は、まず夫婦で話し合い(協議)を行います。協議により合意できなかった場合は、調停や審判、裁判など、家庭裁判所での手続きにより親権者を決めていきます。
3-1.協議
親権者を決める最初のステップは、離婚時に夫婦間での話し合い(協議)をすることです。
子どもが複数人いる場合は、一人ひとりについて、どちらが親権者になるか決める必要があります。それぞれ個別に親権者を指定できますが、前述した「きょうだい不分離の原則」により、基本的には同じ親権者を指定することが望ましいとされています。
そして、離婚および親権者の指定について、双方が合意した場合、親権者を記した離婚届を市区町村役場に提出すれば手続きが完了します。
3-2.調停
親権を巡る話し合いが成立しなかった場合、家庭裁判所に対して調停を申し立てることができます。調停は、中立的な第三者である調停委員や裁判官が仲介し、公平な立場で助言や提案を行いながら、双方の意見を調整します。
調停では、当事者同士が直接顔を合わせないように配慮されます。たとえば、調停室や待合室で、相手方と鉢合わせない仕組みなどが整っています。
調停を申し立てる際は、自分自身か相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に、申立書や事情説明書、戸籍謄本などの書類を提出します。申立て後は、次のような流れで調停が進められます。
- 調停期日の調整
- 調停の実施
- 家庭裁判所調査官による監護状況の調査
- 調停の成立
調停を申し立てると、家庭裁判所から調停を行う日(期日)に関する連絡があります。期日が決定すると、夫婦のそれぞれに調停期日の通知書(呼出状)が送られてきます。
調停期日には双方が家庭裁判所に出頭し、調停委員を交えて話し合いを行います。話し合いは通常、1~2か月に一度のペースで進みます。
親権者を決める際の参考にするため、必要に応じて家庭裁判所調査官による子どもの監護状況の調査が行われる場合があります。具体的には、子どもとの面談、保育園や学校の訪問、今後の養育方針に関する夫婦からのヒアリングなどを実施して、親子間の関係性、子どもの生活環境、現在および将来の養育計画についての詳細な確認が行われます。
離婚や親権者の指定に関する調停が成立すれば、確定判決と同じ効力を持つ調停調書が作成されます。ただし、調停の成立から10日以内に、市区町村役場へ離婚届と調停調書謄本をしなければなりません。
3-3.審判
調停が不成立となった後、裁判所は必要に応じて「調停に代わる審判」を行うことがあります。この離婚審判は、スピーディな解決を図ることを目的とし、裁判ほどの時間と費用を必要としない手続きです。たとえば、次のようなケースの場合です。
- 夫婦双方が離婚に合意しているが、離婚条件の一部に争いがある
- 相手方が調停に出席できず、手続きが進まない
- 子どもの利益のために急いで問題を解決する必要がある
たとえば、双方が離婚に納得し、財産分与や婚姻費用の金額などで合意しているものの、親権者だけが決まっていないような状況です。
離婚条件の大半に合意していても、一部に争いがあるために裁判を起こすことになれば、解決までにかかる時間や費用が大きな負担となってしまうため、審判が開かれることがあるのです。
なお、審判を開くかどうかはあくまでも裁判官が判断するため、審判を希望していても開かれるとは限りません。審判が開かれた際は、争いが残っている未解決の争点について裁判官が判断をくだし、離婚を成立させます。
ただし、審判の内容に不服がある場合には、異議申し立てを行うことが可能であるため、最終的に裁判に移行するケースが少なくはありません。
つまり、時間や労力をかけて審判まで辿り着いたとしても、不利な結果となった相手方からの異議申し立てが認められているため、結局は裁判で争うことになります。そのため、離婚そのものや離婚条件の大半に合意しているようなケースを除き、調停が不成立になった場合は審判を経ずに裁判に至るケースが多いのです。
なお、審判により離婚が成立した場合も、市区町村役場での手続きが必要です。審判の確定から10日以内に審判確定証明書などの書類を添付し、離婚届を市区町村役場に提出します。
3-4.裁判
調停が不成立となった場合、または、審判に対して異議申し立てが行われた場合、離婚裁判により親権者を決定します。
裁判では、自分と相手方が親権者としての適性や子どもの利益に関する主張と立証を行います。そして、裁判官が子どもの利益を最優先に考慮したうえで、親権者を最終的に決定します。一般的に、判決が出るまで、半年から2年程度の期間を要します。
裁判を起こすには、原告(裁判を起こす人)、または、被告(裁判の相手方)の住所地を管轄する家庭裁判所に訴状を提出します。
訴状には、原告と被告の氏名や住所といった基本的な情報や、離婚の原因、親権を求める理由などを記載します。訴状のほか、戸籍謄本や証拠となる資料なども添付します。
そして、訴状の提出後は次のような流れで裁判が進んでいきます。
- 第1回目の期日の通知と答弁書の提出
- 口頭弁論(弁論準備手続)
- 本人尋問(必要に応じた証人尋問)
- 和解の提案
- 判決の言い渡し
訴状が提出されると、公開の法廷で主張を述べたり、証拠を提出したりする口頭弁論の第1回目の期日を、裁判所が原告と被告に通知します。その際、被告には訴状も送られるため、被告は訴状の内容に意見や反論があれば、答弁書を作成して期限内に裁判所へ提出します。
第1回目の口頭弁論では判決は下されず、月1回ほどのペースで複数回の期日が開かれます。また、非公開の場で争点などを整理する、弁論準備手続が行われる場合もあります。
主張や証拠が出そろうと、原告と被告が相手方や裁判官から質問を受ける本人尋問が行われます。必要に応じて証人が質問を受ける場合もあります(証人尋問)。
なお、裁判に至ったとしても、必ず判決によって決着するわけではなく、判決を言い渡す前に裁判官が和解案を提示することもあります。原告と被告が和解案を受け入れると、和解離婚が成立して裁判は終了します。
和解に至らなければ裁判所が判決を言い渡します。判決の内容に不服がある場合は、判決から14日以内に控訴状を提出することで、高等裁判所に控訴ができます。
14日以内に原告も被告も控訴しなければ判決が確定し、離婚が成立して親権者が正式に決まります。ただし、10日以内に判決の謄本などの書類を添付し、離婚届を市区町村役場に提出しなければなりません。
なお、離婚裁判を起こすには、原則として先に離婚調停を行う必要があります(調停前置主義)。しかし、相手方が行方不明、強度の精神病で話し合いができないなどといった事情があれば、例外的に最初から裁判を起こせる場合があります。
4.親権を取り戻すこともできます
離婚時に親権が配偶者に渡ってしまった場合でも、離婚後に親権を取り戻すことは可能です。これは、子どもの利益(子どもの福祉)を最優先に考慮するという家庭裁判所の判断基準にもとづいています。
4-1.手続きの流れ
親権を取り戻すためには、家庭裁判所に「親権者変更の調停」を申し立てる必要があります。手続きの流れは離婚調停と同様であり、調停が不成立となった場合には審判が行われることもあります。
なお、親権者変更の調停でも、親権者の変更が子どもにとって利益があるかどうかを最大限に考慮しながら話し合いが行われます。
4-2.親権変更が認められる要件
親権者の変更が認められるためには、現在の親権者による養育環境が不適切である、または、子どもの利益を損なうものであることを示し、変更を主張する側が子どもを適切に養育できる環境と能力を有している点を証明する必要があります。たとえば、次のような状況が該当します。
- 親が子どもに対して虐待やネグレクトを行っている
- 現在の親権者が経済的に子どもを養育できていない困窮状態にある
- 子ども自身が現在の親権者との生活を望んでいない
- 親権者の変更により、子どもの監護環境が大幅に改善される
5.弁護士に依頼するメリット
相手方が親権を譲り渡すことに応じればよいのですが、なかなか応じてもらえなければ、親権者を決めるために労力や時間を費やすことになります。
親権を巡る争いでは、専門的な法律知識にもとづき、適切に証拠を収集し、自分が親権者に相応しいことを主張・立証していかなければなりません。自分で配偶者と交渉したり、裁判所での手続きを進めたりするのは極めてハードルが高いものです。
そのため、まずは弁護士に相談し、解決に向けた対応を依頼することが望ましいでしょう。ここでは、弁護士に依頼するメリットを2つご紹介します。
5-1.精神的な負担が軽減します
離婚や親権について配偶者と話し合うことは、精神的に大きな負担がかかります。
配偶者から「絶対に親権は譲らない」と主張されても、浮気や不倫をしたことへの負い目から反論できないかもしれません。また、親権争いでは、感情的な対立がエスカレートしやすいため、冷静で建設的な議論がなかなか進みません。
弁護士に交渉などを依頼することで、配偶者と直接話し合う必要がなくなるため、精神的な負担や時間的な拘束が軽減され、日常生活や子どもとの大切な時間に集中することができます。そして、あなたが親権者として相応しい理由を、弁護士が法的な視点から説明するので、自分で交渉するよりも納得できる解決を目指せるでしょう。
5-2.裁判所での手続きを任せられます
配偶者との交渉が決裂した場合、調停や裁判などを通じて解決を目指します。ただし、証拠を揃えて裁判官に主張する必要があるなど、法的な専門知識が求められるため、適切に対応できなければ不利な結果となってしまいます。
親権争いでは、子どもの養育環境が整っており、自分に親権者としての適性がある点などを証明しなければなりません。弁護士は調停や裁判の手続きも熟知しているため、有効な証拠を揃え、適切な主張が可能なので、安心して挑むことができるでしょう。
6.親権を諦める前に弁護士法人プロテクトスタンスへご相談を
浮気や不倫による不貞行為は、確かに非難されるべきことですが、不倫した事実だけをもって、親権者としての資格まで否定されるわけではありません。何よりも大切なお子さまのことですから、親権を諦める必要は一切ありません。
お子さまへの深い愛情と責任感があるからこそ、親権を諦められないのだと思いますし、その想いは調停や裁判でもきっと伝わるでしょう。一人で抱え込んで苦しまずに、まずは弁護士に相談してみることが重要です。
経験豊富な弊事務所までご相談いただければ、お気持ちに寄り添いながら、親権を獲得できるように尽力いたします。