目次
- 0.共同親権が導入されます
- 1.共同親権とは
- 2.共同親権導入の背景
- 3.共同親権が導入されるまでの流れ
- 4.共同親権が導入された後の親権者の決め方
- 4-1.離婚後も親権者の変更は可能
- 4-2.単独親権となるケース
- 4-3.共同親権でも、子どものことを単独で決められるケース
- 5.共同親権のメリット
- 5-1.親権争いの緩和
- 5-2.養育費の支払い促進
- 5-3.両親の継続的な関与
- 6.共同親権導入の懸念点とは?
- 6-1.意思決定が難しくなり、子どもに影響が出る
- 6-2.単独親権と共同親権の選択で争いが起きる
- 6-3.DV・虐待から逃れられなくなる
- 6-4.共同親権になっても単独親権と同じ問題が残る
- 7.親権についてのご不安は弁護士法人プロテクトスタンスにお任せください
0.共同親権が導入されます

現在の日本では、離婚後は両親のいずれか一方が親権者となる「単独親権」が採用されています。しかし、民法の改正により2026年5月までに「共同親権」が導入されるため、離婚後は単独親権と共同親権のどちらかを選択できるようになります。
お子さまがいて、離婚を考えている方の中には「共同親権って何…?どうなるの?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
また、改正民法では、既に離婚して単独親権となっている場合でも、親権者変更の手続きによって共同親権とすることも可能とされています。そのため、既に離婚した元夫婦にとっても無関係ではありません。
この記事では、共同親権の導入の背景やメリットについて、弁護士が法的な観点から詳しく解説します。
1.共同親権とは
共同親権とは、離婚後も子どもの親権を両親が共同で持つ制度を指します。
親権は大きく分けて、子どもの身の回りの世話や教育を行う「身上監護権」と、子どもの財産を管理する「財産管理権」とに分かれます。
身上監護権とは、単に監護権とも呼ばれ、子どもの身の回りの世話を行い、子どもの進学や教育方針、留学、医療などについて決める権利と義務のことで、次のような種類があります。
- 居所指定権(子どもの居所を指定する)
- 監護教育権(子どもの世話や教育を行う)
- 職業許可権(子どもの就業を許可・制限する)
- 身分上の行為の代理権(認知の訴えや相続の承認・放棄など)
そして、財産管理権とは、子どもの財産の管理権や法律行為の代理権のことで、具体的には次のようなものが含まれます。
- 子どもの財産の管理権(銀行口座の開設など)
- 法律行為の代理権(保険契約や不動産の売買契約など)
- 法律行為の同意権(携帯電話の契約やアルバイトの雇用契約など)
離婚する際、単独親権では身上監護権と財産管理権の両方を、両親のどちらかが持ちます(例外的に片方が身上監護権を持ち、もう一方が財産管理権を持つことも可能です)。
共同親権では、これらの権利と義務を両親が共有し、協力して子どもの最善の利益を追求します。単独親権は「一人の親」が権利と義務を負うのに対して、共同親権は「両親で協力して」権利と義務を負うという違いがあります。
2.共同親権導入の背景
共同親権制度が導入される背景には、国際的な法整備の流れがあります。多くの先進国では、離婚後も子どもが継続的に両親の愛情を受けられる環境を整えるために共同親権が採用されています。
この国際的な潮流に日本も適応する必要があるという議論が進み、共同親権の導入が決定しました。
また単独親権によって、親権を得られなかった親が一方的に子どもを連れ去ってしまう、親権者に養育費を支払わないといった事例が社会問題となってきました。これらの解決を図るため、共同親権の導入が進められたという側面もあります。
3.共同親権が導入されるまでの流れ
日本で共同親権の導入が検討されたのは2020年代に入ってからです。次のような流れで法改正へと進みました。
2021年3月 | 法務省の有識者会議が共同親権の導入に向けた議論を開始 |
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2022年11月 | 有識者会議が共同親権の導入に関する中間試案を策定 |
2024年1月 | 共同親権の導入を盛り込んだ民法改正の要綱案が取りまとめ |
2024年3月 | 民法の改正案を閣議決定 |
2024年5月 | 民法の改正案が参議院本会議で可決・成立 |
共同親権の導入を可能とする改正民法の施行は、2024年5月の公布から2年以内と定められており、2026年5月までに施行される予定です。
なお、共同親権の導入に伴い、養育費の支払いや面会交流の実施に関するルールも見直される予定です。
4.共同親権が導入された後の親権者の決め方

改正民法が施行されることで、両親の協議により離婚時に「単独親権」か「共同親権」を選択できるようになります。協議が難航する場合は、家庭裁判所を利用して解決を図ることができます。
既に離婚して単独親権となっている場合でも、家庭裁判所に申し立てることで共同親権への変更が可能となります。
それでは、親権者を決める際に知っておきたいポイントをご説明します。
4-1.離婚後も親権者の変更は可能
単独親権か共同親権かを選び離婚した後でも、状況の変化に応じて、親権者を変更することが可能です。
たとえば、親の健康状態の悪化や経済状況の変化など、子どもの福祉に影響を及ぼす事由が生じた場合、家庭裁判所に親権者変更の申し立てを行うことができます。裁判所は、子どもの最善の利益を考慮して判断を下します。
4-2.単独親権となるケース
片方の親に家庭内暴力(DV)や虐待の事実がある場合、または両親の深刻な対立により共同での子育てが困難と判断される場合があります。
こうした状況で単独親権か共同親権かで対立が生じた際には、子どもを守るために裁判所が単独親権を認めることが予定されています。
4-3.共同親権でも、子どものことを単独で決められるケース
共同親権でも、緊急性の高い事項や日常的な事柄については、一方の親が単独で判断を下すことが認められる予定です。
たとえば、子どもが急病になった際の医療対応や、日々の生活に関する細かな決定は、同居している親が主体的に行うことが一般的です。ただし、教育方針や進路選択など、長期的かつ重要な事項については、両親での協議が必要となるでしょう。
具体的な親権の行使方法や特定のケースでの対応については、引き続き、最新動向を常に注視していくことが求められます。
5.共同親権のメリット
共同親権を選択することで、次のようなメリットが期待できます。
5-1.親権争いの緩和
離婚時に親権を一方に決める必要がなくなるため、親権争いが軽減されます。これにより、離婚がスムーズに成立しやすくなるのではないかと予想されています。
5-2.養育費の支払い促進
両親が共同で養育責任を負うため、養育費の支払い方法や負担割合が変わる可能性があります。具体的な内容はまだ議論中ですが、両親が共同で権利と義務を持つことで、養育費の未払いリスクが低減されることが期待されています。
5-3.両親の継続的な関与
離婚後も両親が養育に関与できるため、子どもは双方からの愛情をしっかりと実感し、安定した環境で成長できます。非同居親との面会交流が円滑になる可能性もあります。
6.共同親権の導入による懸念点とは?
共同親権の導入により、従来の単独親権と比べて親権を巡る紛争の減少が期待されますが、一方で、以下のような対立が生じる可能性も指摘されています。
6-1.意思決定が難しくなり、子どもに影響が出る
共同親権を選択すると、子どもの教育、医療、生活環境などの重要な決定を両親が協議しながら進める必要があります。
しかし、離婚した両親の意見が一致するとは限らず、特に価値観や教育方針、医療に対する考え方に相違がある場合、大きな対立を生む可能性があります。
たとえば、進学先の選択では、私立と公立のどちらが良いか、習い事を続けるべきかなど、両親の意見が食い違うことがあります。医療の選択においても、ワクチン接種や特定の治療方針に対する考え方が異なる場合、適切な医療を受けるタイミングが遅れる可能性があります。
こうした意見の対立が続くと、最終的に子ども自身が板挟みとなり、精神的なストレスを抱えることも考えられます。
6-2.単独親権と共同親権の選択で争いが起きる
単独親権を選択したいという親と、共同親権を選択したいという親が対立することが予想されます。
たとえば、単独親権を希望する親は、「子どもに関する決定を迅速にし、生活環境を安定させたい」「もう一方の親との関係が悪化しており協力が難しい」「DVや虐待の問題がある」などの理由を挙げるでしょう。
一方、共同親権を希望する親は、「親としての権利を持ち続けたい」「子どもと積極的に関わる機会を確保したい」「教育方針を対等に決定したい」といった主張をするでしょう。
意見の対立が激化すると、感情的な争いに発展し、親権をめぐる協議が長期化する可能性があります。このような状況では、弁護士が代理人として介入し、法的な観点から適切な交渉を行うことが不可欠です。
6-3.DV・虐待から逃れられなくなる
DVや虐待の被害を受けている場合、共同親権を選択すると安全を確保しづらくなるという懸念点があります。
共同親権の制度では、離婚後も両親が協力して子どもの養育を行うことが前提となっており、その結果として元配偶者同士が頻繁に連絡を取り合う必要性が生じます。
一方の親がDVや虐待の加害者であった場合、連絡を継続的に取らざるを得ない状況が、被害者側にとって心理的・物理的な危険性を高めることにつながります。
単独親権であれば、親権者となった親が子どもの養育に関する重要な判断を単独で行うことが可能となり、元配偶者との関わりを最小限に抑えることができます。これにより、DVや虐待の被害者は加害者から物理的・心理的距離を確保しやすくなり、安全性が向上します。
ただし、DVや虐待を理由に裁判所に単独親権を求める際は、被害を受けたことがわかる証拠が必要です。的確な証拠の収集と家庭裁判所への申し立てには、弁護士のサポートが不可欠です。
6-4.共同親権になっても単独親権と同じ問題が残る
共同親権を選択しても、単独親権で生じる問題がすべて解決するとは限りません。次のような問題は引き続き残ってしまうでしょう。
- どちらが子どもと住むか
共同親権だからといっても、両親が離婚後に離れて暮らすのであれば、実際に子どもと住むことができるのは片方の親のみになります。どちらも自分が子どもと住みたいと譲らなかった場合は争うことになります。 - 面会交流の頻度
必ずしも両親が完全に平等に子どもと会えるわけではありません。離婚後の関係が悪化している場合、一方の親が面会を妨害したり、逆に過度な面会を要求したりするケースが発生するでしょう。 - 経済的な分担
親の経済状況が変化した場合、養育費の見直しを巡る争いが生じたり、教育費や医療費などに関して「どちらがどの費用を負担するか」で対立したりするでしょう。
これらの問題について話し合いによる解決が難しい場合は、法律と交渉の専門家である弁護士への依頼が不可欠です。
7.親権についてのご不安は弁護士法人プロテクトスタンスにお任せください
共同親権の導入により、単独親権時代の「どちらが親権を取るか」という争いは減るかもしれません。
しかし、その代わりに「単独親権と共同親権のどちらにするか」など、新たな争点が生まれ、弁護士の代理が必要なケースは依然として多く発生すると考えられます。特に、DV・虐待のリスクがあるケースでは、適切な対応が求められます。
弊事務所は、親権について豊富な実績を持つ弁護士が、共同親権が導入される改正民法の施行に向けた最新動向を常に注視し、的確なアドバイスをご提供できるよう努めております。
お一人おひとりの状況に寄り添いながら、最新の情報を踏まえた上で、ご依頼者さまの親権の確保をサポートいたしますので、親権問題に不安を抱えている方は、ぜひ一度ご相談ください。