Q.婚姻費用は別居中でも支払われるのですか?

A.婚姻費用分担の義務は、別居中でも存在します。なぜならば、別居状態であっても、法律上の夫婦関係は継続しているからです。

夫(あるいは妻)は、出ていった別居中の配偶者に対して、自身の方が収入・資産がある場合は、離婚が成立するまでの期間中ずっと、婚姻費用(一般的には「生活費」とよぶこともあります)を支払う義務を負います。

この点、よく「勝手に家を出ていったのだから、生活費を払う義務はない!」と主張する人もいますが、この主張が法律上認められる可能性はありません。

支払いを怠ったことを続けてしまうと、相手から家庭裁判所に対して「婚姻費用分担調停(不成立の場合は審判)」が起こされる可能性があります。

それでも未払いを続けると、強制執行の手続きを申し立てられ、最終的には強制的に自分の財産から未払い分の婚姻費用が回収されます。

婚姻費用を算定する裁判においては、「養育費・婚姻費用の算定方式と算定表(令和元年12月に改正)」という基準が実務上使われています。これにより、お互いの年収や子どもの有無や人数に基づき、収入の高い方から、低い方の配偶者に対して支払うべき婚姻費用が決められます。

この算定表は、インターネット上で簡単に見ることができますから、「自分は別居したら、どれ程度婚姻費用をもらえるのか」といった大まかな基準を知ることもできます。

なお、夫(あるいは妻が)が別居中の相手に対して、支払うべき婚姻費用の割合については、同居中の婚姻費用と同額までを支払う必要はなく、また、借金してまでも支払う必要もなく、社会人として生活する上で最低限度の必要な金額に留めるべきという裁判例もあります(東京高裁昭和52年9月30日判決、東京高裁昭和54年2月9日判決)。