Q.離婚するにはどのくらいの別居期間が必要ですか?

A.配偶者が離婚に応じれば、別居期間の長さにかかわらず離婚することが可能です。もし、離婚するかどうかを裁判で争う場合、一般的な目安として別居期間が3~5年程度だと裁判所から離婚が認められる可能性が高いと考えられています。

ただし、あくまでも目安なので、個別具体的な事情によっては1年未満の別居期間で離婚が認められるケースも少なくありません。逆に5年以上の長期にわたって別居していても、離婚が認められない可能性もあります。

1.配偶者と離婚する方法と別居期間の関係

離婚の方法には大きく「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3種類があり、それぞれの方法と別居期間には深い関係があります。

・協議離婚

夫婦の話し合いによって離婚する方法です。夫婦の双方が離婚することに合意すれば、別居期間の長さに関係なく離婚が成立します。そのため、別居が1年未満などの短期間であっても、配偶者の合意があれば離婚届を提出することで離婚が可能です。

・調停離婚

家庭裁判所の調停委員が夫婦の間に入り、話し合いによって離婚を目指す方法です。夫婦での話し合いがまとまらない場合や、話し合いに応じてもらえない場合などに利用します。協議離婚と同様、配偶者が合意すれば、別居期間を問わず離婚することができます。

・裁判離婚

調停でも解決できない場合、裁判を起こして裁判官に離婚の可否を判断してもらうことができます。裁判離婚が認められるかどうかは、「法定離婚原因」(法定離婚事由)の有無が判断基準の一つとなり、別居期間の長さも重要なポイントです。

2.裁判離婚に必要な「法定の離婚理由」とは?

裁判で離婚が認められるには、法律で定められた「法定離婚原因」のいずれかに該当する事情が必要です(民法第770条1項)。具体的な事情は次の通りです。

  • 配偶者に不貞行為があった
  • 配偶者から悪意で遺棄された
  • 配偶者の生死が3年以上明らかでない
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
  • その他、婚姻を継続し難い重大な事由がある

そして、長期間にわたって配偶者と別居している場合は「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして、裁判所から離婚が認められる可能性があります。

3.裁判所が離婚を認める別居期間の目安

配偶者との別居が長期間に及んでいると、裁判所は婚姻関係が破綻しているなどと判断して離婚を認めます。一般的には、離婚が認められる別居期間として、3年から5年ほどが目安の一つと考えられています。

しかし、「別居期間が〇年以上であれば離婚を認める」など、明確な基準があるわけではありません。あくまでも離婚について争う夫婦それぞれの個別具体的な事情を踏まえて判断されます。

たとえば、配偶者による不貞行為や暴言・暴力など、別居以外にも法定離婚原因に該当する事情があるような場合、1年未満など短期間の別居で離婚が認められるケースがあります。一方、別居期間が5年以上に及んでいるのに、離婚が認められない可能性もゼロではありません。

4.有責配偶者からの離婚請求は長期の別居期間が必要

不貞行為をした、配偶者に対する暴言や暴力があったなど、法定離婚原因を作った側の人を有責配偶者と呼びます。そして、裁判所は有責配偶者からの離婚請求を原則としては認めていません(最高裁昭和62年9月2日判決)。

しかし、次の条件を満たす場合、例外的に離婚が認められるケースがあります。

  • 別居期間が非常に長い
  • 夫婦間に未成熟の子どもがいない
  • 離婚によって配偶者が精神的・社会的・経済的に過酷な状況に陥らない

有責配偶者からの離婚請求が認められるには、長期の別居期間が必要です。目安としては10年以上、事情によっては20年ほどの別居期間が必要となる可能性もあります。

5.離婚に向けて別居する際の注意点

離婚に向けて、これから配偶者と別居する場合は、次のような点に注意しましょう。

・配偶者に無断で家を出ない

夫婦には、民法上「同居義務」「協力義務」「扶助義務」が課されています。簡単に説明すると、夫婦は一緒に暮らして生活を共にしながら、お互いに助け合わなければなりません。

そのため、無断で家を出ていくと、自身が法定離婚原因である「悪意の遺棄」をした有責配偶者になってしまう可能性があります。DVの被害を受けているなど、急いで家を出るべき状況を除き、できる限り配偶者の承諾を得てから別居するようにしましょう。

・離婚するまで配偶者以外の人と肉体関係を持たない

配偶者以外の人と肉体関係(不貞行為)に及ぶことは、やはり法定離婚原因に該当し、有責配偶者となってしまいます。すでに配偶者以外のパートナーがいても、離婚が成立するまでは慎重に行動するようにしましょう。

別居するうえで重要なポイントは、自身が有責配偶者にならないことです。裁判で離婚が認められないリスクがあるだけでなく、配偶者から慰謝料を請求されるおそれもあります。

6.離婚後に親権を獲得するなら別居時に子どもと同居する

また、配偶者との間に子どもがいて、離婚後に親権を獲得したいと考えている場合、別居時に子どもと一緒に暮らすようにしましょう。裁判所が親権者を決める際、子どもの世話をしていた親が有利になる可能性が高いからです。

ただし、どちらが親権者になるか夫婦間で意見が対立していても、配偶者に無断で子どもを連れて家を出るべきではありません。子どもを連れ去ったと裁判所に判断されてしまい、逆に不利な状況となってしまうリスクがあります。

7.離婚問題は弁護士にご相談を

離婚を巡って配偶者と争いになったら、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。

現在の状況で離婚が認められる可能性があるかどうか、また、できるだけ早く、より有利な条件で離婚するために取るべき手段などをアドバイスしてくれます。

さらに、離婚に応じてもらえない場合や、離婚の条件を巡って意見が対立している場合は、配偶者との交渉、裁判所での調停、訴訟などの対応を任せることが可能です。

新たな人生をスタートするための第一歩として、ぜひ弁護士へご相談ください。

この記事を監修した弁護士

弁護士
金岡 紗矢香

弁護士法人プロテクトスタンス所属 (第一東京弁護士会 No. 56462)

早稲田大学法学部を卒業後、国内大手飲料メーカー勤務などを経て中央大学法科大学院法務研究科を修了(70期)。弊事務所に入所後は子育てをしながら弁護士として活動し、浮気・不倫の慰謝料請求や離婚・男女問題などの分野で活躍中。

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