Q.再婚を考えているのですが、注意点はありますか?

A.再婚の手続きは、婚姻届の提出により完了するため、基本的には初婚時と同様です。しかし、子どもを連れて再婚する場合は、戸籍や養育費、相続などに関する法的なルールを把握することをおすすめします。

また、新たな家族と人生を再出発するために、自分や子どもの気持ちの面でも十分に準備しておきましょう。

1.再婚の手続き

新たなパートナーと再婚するための手続きは、最初に結婚した際とほぼ変わりません。基本的には、市区町村役場へ婚姻届を提出するだけで完了します。

もし、再婚後に自分の住所や氏(姓)が変わる場合、運転免許証や健康保険証、マイナンバーカード、銀行口座、クレジットカードなどの変更手続きを早めに済ませましょう。

2.再婚すると自分の戸籍や氏はどうなる

初婚か再婚かにかかわらず、結婚したら配偶者と同じ戸籍に入ることになります。
その際、夫婦で新しい戸籍を作る場合もあれば、次のような方法でどちらかの戸籍に入る場合もあります。

  • 自分が筆頭者となっている戸籍に再婚相手が入る
  • 再婚相手が筆頭者となっている戸籍に自分が入る

筆頭者とは戸籍の最初に記載されている人のことです。再婚後は筆頭者の氏を名乗ることになるため、再婚相手が筆頭者になっている戸籍に入る場合は氏が変わります。

3.子どもの戸籍や氏には注意が必要

子どもを連れて再婚する場合、子どもの戸籍や氏が変更するかどうかについて注意が必要です。

まず、自分が筆頭者の戸籍に再婚相手が入る場合、子どもの戸籍や氏に変更はありません。
一方、自分が再婚相手の戸籍に入る際は、再婚相手と自分の子どもが養子縁組をするかどうかが、子どもの戸籍や氏に大きく影響します。

3-1.再婚相手と子どもが養子縁組する場合

再婚相手の戸籍に入り、自分の子どもと再婚相手が養子縁組をする場合、子どもも一緒に再婚相手の戸籍に入ることになります。
そのため、子どもの氏も再婚相手の氏に変更されます。

3-2.再婚相手と子どもが養子縁組しない場合

再婚後も再婚相手と自分の子どもが養子縁組をしない場合、自分だけが再婚相手の戸籍に入り、子どもはこれまでの戸籍に残ることになります。
そして、自分は再婚相手の氏に変わりますが、子どもの氏は従来のままです。

親子で戸籍や氏が異なる状況となりますが、親子であることは変わらないため、親権や養育・扶養といった親子関係にも影響はありません。
再婚によって子どもの氏が変わるのを避けたい場合、再婚相手と養子縁組をしないことを選択してもよいでしょう。

もし、養子縁組をすることなく同じ氏にしたい場合は、子どもの氏を再婚相手の氏に変更したうえで、同じ戸籍に入るための手続きが必要です。
具体的には、まず家庭裁判所に子どもの「氏変更許可」を申し立てて、氏の変更が許可されたら本籍地の市区町村役場へ「父または母の氏を称する入籍届」を提出します。

4.再婚で養育費が減額するケースも

子どもがいる夫婦が離婚する際、子どもと一緒に暮らして世話(監護)をする親は、もう一方の親に対して養育費を請求することができます。

この点、養育費の支払いは義務であるため、再婚してもその義務が免除されるわけではありません。ただし、再婚により金額が見直される可能性はあります。

4-1.支払っている人が再婚した場合

養育費を支払っている人が再婚しても、養育費の支払い義務は継続します。

ただし、再婚相手との間に子供が生まれるなど、生活費の負担が大きくなった場合は、元配偶者に養育費の減額を求めることが可能です。

4-2.受け取っている人が再婚した場合

一方、養育費を受け取っている人が再婚した際も、養育費を受け取り続けることが可能で、原則として金額にも影響しません。

ただし、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、扶養義務が消滅したとして、元配偶者が養育費の減額や支払いの終了を求めてくる可能性があります。
養子縁組をしなくても、再婚相手が全面的に生活費を支えているようなケースでは、養育費の減額を請求してくることが考えられるでしょう。

5.再婚後も子どもと元配偶者の面会交流は実施する

子どもを連れて離婚した際、子どもと離れて暮らす元配偶者と子どもの間で面会交流が行われます。
そして、再婚したり養子縁組したりしたことを理由に、子どもと元配偶者を会わせたくないと考えても、面会交流は一方的に拒否できません。

もし、調停などで取り決めた面会交流の方法や頻度を守らなかった場合、裁判所から勧告を受けたり、元配偶者から慰謝料を請求されたりする可能性があります。

ただし、再婚相手と新たな家族関係を構築するうえで、実親である元配偶者との面会交流によって子どもが動揺するかもしれません。
子どもへの配慮が求められるようなケースでは、面会交流の方法や頻度の見直しを元配偶者に求めてもよいでしょう。

6.再婚と相続のルールを把握しておく

配偶者には亡くなった方の財産を相続する権利(相続権)があります。
この点、再婚によって再婚相手の財産を相続する権利が生じるものの、元配偶者の財産については離婚時に相続権を失います。

次に、子どもを連れて再婚した場合、親の財産に対して子どもが持っている相続権はどうなるのでしょうか。

まず、離婚後も実親である元配偶者の財産については、相続権が失われません。

また、再婚相手の財産に関しては、再婚相手が子どもと養子縁組をするか、子どもに財産を残す内容の遺言書を残した場合に相続することができます。
つまり、再婚しただけでは、再婚相手の財産を子どもが相続することはできないので注意しましょう。

7.新たな家族関係の構築は気持ちの準備も大切に

再婚は人生を再スタートするための大きな出来事です。

新しい家族と幸せな毎日を送るためにも、これまでご説明した法的なルールを理解するだけでなく、気持ちの面でも十分に準備しておきましょう。
人によって離婚の理由や再婚の状況はさまざまですが、再婚を決断する前に、次のような点について考えておくことが大切です。

  • 過去の離婚に対して気持ちの整理はついているか
    元配偶者への未練や怒り、不信感などが残ったままでは、再婚相手との関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。気持ちの区切りをつけ、過去の離婚を前向きに受け止められる状態になっているかを振り返りましょう。
  • 再婚相手と価値観や金銭感覚にズレがないか
    生活スタイルや子育ての方針、お金の使い方などについて、ズレがないかあらかじめ確認しておきましょう。日常の中で大切な価値観を共有できているかは、再婚後の安定した生活に直結します。
  • 子どもが再婚相手を受け入れているか
    再婚は、自分自身はもちろん子どもにとっても、家庭環境が大きく変わることになります。子どもの気持ちを尊重し、丁寧な説明や対話を重ねることが大切です。焦らずに時間をかけて子どもと再婚相手の信頼関係を築きましょう。
  • お互いの家族と良好な関係を築けそうか
    親族や義理の家族との関係が良好であることも、円満な家庭生活を送るうえで欠かせない要素です。それぞれの背景を理解し合い、お互いに歩み寄る姿勢を持てるかを考えてみましょう。

さらに、お互いの過去の経験や家族の事情について、再婚相手と率直に話し合える関係性を築いておくことも非常に重要です。
信頼と理解のうえに成り立つ再婚こそが、人生の新しいステージを支える土台となるでしょう。

再婚を希望しつつも不安がある場合、必要に応じて家庭や夫婦関係に詳しいカウンセラーや専門家に相談することも手段の一つです。
感情面と法的側面の両方から準備を整え、心から安心できる再婚を目指しましょう。

8.離婚後のトラブルは弁護士にご相談を

離婚して新たな人生を歩もうとしても、元配偶者とトラブルが生じる可能性があります。
たとえば、養育費の減額・増額や、面会交流の見直し、親権の変更などを巡って意見が対立するかもしれません。

ただし、こうした問題を解決するには法的な知識が求められます。
離婚・男女問題に詳しい弁護士へ相談し、配偶者との交渉や調停、訴訟などの対応を依頼することが重要です。

再婚に関する法的なポイントを押さえつつ、ご自身とご家族の心の準備もしっかり整え、より幸せな未来を目指してください。

この記事を監修した弁護士

弁護士
金岡 紗矢香

弁護士法人プロテクトスタンス所属 (第一東京弁護士会 No. 56462)

早稲田大学法学部を卒業後、国内大手飲料メーカー勤務などを経て中央大学法科大学院法務研究科を修了(70期)。弊事務所に入所後は子育てをしながら弁護士として活動し、浮気・不倫の慰謝料請求や離婚・男女問題などの分野で活躍中。

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