Q.離婚が成立した後、再婚できるまでに期間の制限はありますか?

A.離婚が成立してから再婚できるまでに期間の制限はないため、離婚後すぐに再婚することも可能です。

以前は、離婚した女性に対して「再婚禁止期間」という制度が設けられており、離婚から100日間が経過しないと再婚できませんでした。しかし、再婚禁止期間が廃止されたため、男女ともに離婚後はいつでも再婚できるようになりました。

1.再婚禁止期間とは

再婚禁止期間とは、夫と離婚したり、死別したりした女性に対し、離婚や死別から100日間が経過するまで再婚を禁止する制度です。2024年3月で廃止されたため、現在は離婚したらいつでも再婚することが可能です。

再婚禁止期間の目的は、離婚後に生まれた子どもの父親が、元夫と再婚後の夫のどちらかを推定するうえで、混乱が生じるのを避けることです。そして、「嫡出推定規定」という親子関係に関する法律のルールと密接に関連していました。

2.嫡出推定規定とは

嫡出推定規定とは、妻が婚姻中に懐胎(妊娠)した子どもを夫との間に生まれた子どもと推定する制度です。そして、次のような時期に生まれた子どもも婚姻中に懐胎したと推定されます。

  • 婚姻の成立から200日を経過した後に生まれた
  • 婚姻の解消や取り消しから300日以内に生まれた

つまり、夫と離婚した日から300日以内に子どもが生まれた場合、出生届を提出すると実際の血の繋がりとは無関係に元夫の子どもと推定されるのです。

もし、離婚後300日以内に元夫ではない男性との子どもが生まれた場合、元夫が父親になるのを避けるには、嫡出否認の訴えという裁判上の手続きを進めるなど、煩雑な対応が必要でした。

3.嫡出推定規定の問題点とルールの見直し

嫡出推定規定の目的は、扶養義務を負っている父親を早期に確定し、子どもの権利を保護することです。しかし、嫡出推定規定はさまざまな問題点が指摘されていたため、2024年4月にルールが見直され、再婚禁止期間の廃止にも繋がりました。

嫡出推定規定の大きな問題は、子どもが生まれた時期によっては血の繋がりがない元夫が、父親となるケースがある点です。

たとえば、離婚前に夫以外の男性と肉体関係があった場合、夫と離婚してから300日以内にその男性との子どもが生まれるかもしれません。その後、子どもの実父である男性と再婚しても、離婚から300日以内に生まれていれば、出生届を提出すると離婚した元夫との子どもとして扱われます。

実際は血が繋がっていなくても元夫との子どもと扱われてしまうことを「離婚後300日問題」と呼びます。そして、元夫との子どもとして扱われるのを避けるために出生届を提出せず、子どもが無戸籍になってしまうという問題まで生じていました。

このような課題を解決するため、2024年4月に嫡出推定規定のルールが見直されました。具体的には、離婚後300日以内に子どもが生まれても、出産時に母親が再婚していれば、再婚相手である夫の子どもと推定されるようになったのです。

嫡出推定規定が見直された結果、再婚禁止期間を設ける意義がなくなったため、制度が廃止されました。

4.再婚禁止期間の廃止

以前の嫡出推定規定では、婚姻から200日を経過した後、または離婚から300日以内に生まれた子どもは、婚姻中に生まれたと推定されていました。

もし、離婚と同時に再婚が可能な場合、元夫の子どもと推定される時期と、再婚後の夫の子どもと推定される時期が100日間重なることになります。そのため、子どもの父親が誰かを巡って混乱が生じることがないよう、再婚禁止期間が設けられていました。

しかし、嫡出推定規定の見直しにより、離婚後300日以内に再婚すれば、再婚後の夫の子どもと推定されるようになりました。その結果、元夫と再婚後の夫で推定が重複する期間がなくなったため、再婚禁止期間を設ける必要がなくなったのです。

5.離婚に伴うトラブルは弁護士にご相談を

再婚禁止期間の廃止によって、離婚が成立した後はいつでも再婚することが可能になりました。そのため、配偶者と離婚したら交際中のパートナーとすぐに再婚したいと考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし、婚姻中に積み上げてきた財産の分け方(財産分与)など、離婚に際して配偶者と話し合うべき事項は少なくありません。特に、子どもがいる夫婦は親権者を決めなければ離婚できませんし、養育費の金額や面会交流の方法、頻度なども今後の生活を考えると重要なポイントです。

夫婦間の話し合いだけでスムーズに離婚できるケースもありますが、意見が対立してしまうことも考えられます。夫婦関係が悪化しているような場合は、冷静に話し合うことすらできない可能性もあるでしょう。

また、早く再婚することを優先するあまり、不利な条件で離婚を成立させてしまうと、後になって後悔するかもしれません。そのため、離婚について配偶者とトラブルになった場合は、弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士であれば、婚姻期間や夫婦関係、財産の状況、お子さまの有無といった事情から、適切な離婚の条件についてアドバイスしてくれます。さらに離婚に向けた配偶者との交渉を任せることもできますし、調停や審判、訴訟などに至っても対応を依頼することが可能です。

新たな生活を前向きにスタートできるよう、離婚時のお悩みやご不安は、ぜひ弁護士にご相談ください。

この記事を監修した弁護士

弁護士
金岡 紗矢香

弁護士法人プロテクトスタンス所属 (第一東京弁護士会 No. 56462)

早稲田大学法学部を卒業後、国内大手飲料メーカー勤務などを経て中央大学法科大学院法務研究科を修了(70期)。弊事務所に入所後は子育てをしながら弁護士として活動し、浮気・不倫の慰謝料請求や離婚・男女問題などの分野で活躍中。

詳しいプロフィールを見る