Q.浮気・不倫をした親は離婚に際して親権者になれますか?

親権としてふさわしいかの判断材料はいくつかあります

A.浮気・不倫をした親でも親権者になれる可能性はあります。浮気・不倫を理由に離婚することはあくまでも夫婦の問題であり、どちらが親権者になるべきかという子どもの問題とは、基本的に無関係と考えられるからです。

(1)離婚原因と親権は別問題

離婚する夫婦に子どもがいる場合、夫婦のどちらが子どもの親権者になるかを決めなければなりません。そして、夫婦のどちらが親権者としてふさわしいかは、不倫や浮気など夫婦間のトラブルとは別に考えられます。

浮気・不倫をして婚姻関係を破綻させたとしても、子どもにとって悪い親であるとは言い切れません。そのため、きちんと子どもを育てる能力があり、子どもとの関係が良好であれば、浮気・不倫をした親でも親権を獲得できるチャンスはあります。

ただし、離婚に向けた話し合いの中で配偶者が「不倫するような人に子どもを任せることはできない」などと主張してくるかもしれません。親権者を決めなければ離婚することはできないので、話し合いがこじれてしまうことも考えられます。

(2)親権者を決定する基準

夫婦のどちらが親権者になるべきかについては、どちらの親と一緒にいる方が、子どもにとって幸せな環境なのかが判断の焦点とされています。たとえば、次のような観点が重視されます。

  • 子どもへの愛情
  • 仕事の内容や勤務時間
  • これまでの子育て状況や関わり方
  • 離婚後、子育てにかけられる時間
  • 離婚後の居住環境・経済力
  • 離婚後の面会交流に対する考え方
  • 心身の健康状態
  • 子どもの意思

子どもの意思について、子どもの年齢が15歳以上であれば親権者を決める基準として重要視されます。また、15歳未満でも、調停や裁判の手続きを通じて家庭裁判所調査官(調査官)が子どもの意思を確認し、その意思が尊重される場合があります。

(3)親権は母親が優先される?

裁判所が親権者を決める際、「母性優先の原則」という基準を考慮します。子どもの福祉の観点から、子どもは父親よりも母親と暮らした方が望ましいという考えです。

特に乳児や幼児のように、子どもが小さければなおさらこの原則が重視される傾向にあります。そのため、母親の浮気・不倫が原因で離婚するとしても、母親がメインで育児や子育てをしていた場合や子どもが幼い場合は、母親が親権者として認められる可能性は高いでしょう。

しかし、次のような事情がある場合、母親であっても親権が認められないと考えられます。

  • 浮気相手に会うため、子どもを家に長時間放置している(育児放棄)
  • 母親や浮気相手が子どもを虐待している
  • 子どもが母親と暮らすことを嫌がっている

また、親権を取得できたとしても、浮気・不倫により婚姻関係を破綻させてしまった責任は別の話です。そのため、浮気・不倫の慰謝料を請求されたら、支払う義務が発生します。

(4)親権者の決定までの流れ

親権者は「協議(話し合い)→調停→裁判」という流れで決定します。

夫婦間の話し合いで離婚と親権者について合意できれば、市区町村役場に親権者を記載した離婚届を提出します。離婚届が受理されると協議離婚が成立し、親権者が決定します。

話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停委員を交えて親権者を決めるための話し合いを続けます。調停での話し合いが合意に至れば、調停離婚が成立して親権者が決まります。

調停でも合意ができなかった場合は、家庭裁判所に離婚訴訟を提起します。訴訟では、夫婦それぞれの主張と証拠をもとに、どちらが親権者にふさわしいのか裁判所が判断します。

(5)浮気・不倫による離婚と養育費は無関係

離婚の原因が不倫・浮気であっても、養育費の金額には影響しません。なぜなら、養育費は子どもが健全に成長するために必要な費用であり、親権者の決定と同様に、夫婦間の問題とは無関係と考えられるからです。

養育費の金額は、裁判所が定めた養育費算定表を参照し、子どもの人数や年齢、夫婦それぞれの年収などから決めていきます。浮気・不倫をした側が親権者となった場合でも、浮気・不倫が原因で離婚したことを理由にした養育費の減額や支払いの拒否は認められません。

まずは元パートナーとの話し合い

(6)親権問題でお悩みの方は弁護士に相談を

親権を巡って配偶者と争いになったら、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

離婚する相手と冷静に話し合いをすることは難しいですし、お互い感情的になってしまい争いが深刻化したり、長期化したりすることも考えられます。話し合いでは決着がつかず、裁判まで至った場合は、自分が親権者にふさわしい理由を適切に主張しなければなりません。

弁護士であれば、配偶者との話し合いをスムーズに進められますし、裁判の場でも法的な視点から主張してくれるため、納得できる解決を目指せるでしょう。もちろん、養育費の金額について争いになった場合も、対応を任せることができます。

弁護士法人プロテクトスタンスには養育費や親権など、離婚に伴うさまざまな問題に対し、解決実績が豊富な弁護士が多数在籍しています。また、不倫・浮気の慰謝料を請求したい、請求された慰謝料を減額したいというご相談やご依頼も多くお受けしておりますので、安心してお任せください。

この記事を監修した弁護士

弁護士
金岡 紗矢香

弁護士法人プロテクトスタンス所属 (第一東京弁護士会 No. 56462)

早稲田大学法学部を卒業後、国内大手飲料メーカー勤務などを経て中央大学法科大学院法務研究科を修了(70期)。弊事務所に入所後は子育てをしながら弁護士として活動し、浮気・不倫の慰謝料請求や離婚・男女問題などの分野で活躍中。

詳しいプロフィールを見る