Q.離婚時に親権を手放したのですが、後から親権者を変更することはできますか?

A.離婚時に決めた親権者を、離婚後に変更することは可能です。

ただし、親同士の話し合いのみで親権を変更することはできません。親権の変更について親同士が合意していても、家庭裁判所での手続きを通じて認めてもらう必要があります。

(1)親権を変更するための流れ

子どもがいる夫婦が離婚するには、父母のどちらが親権者となるかを決めておかなければなりません。そして、一度決めた親権者は、離婚後に変更することが可能です。

ただし、親権者の変更は、子どもの生活環境や心情に大きな影響を及ぼすおそれがあるため、親同士の話し合いだけで親権者の変更を決めても認められません。たとえば、離婚時に「離婚後5年後に変更する」「子どもが中学に入学したら変更する」など、将来的に変更することを事前に決めていても同様です。

親権者を変更するためには、「親権者変更調停」「親権者変更審判」といった裁判所での手続きを経て、認めてもらう必要があります。

(2)親権者変更調停とは

離婚時に決めた親権を変更する場合は、まず家庭裁判所に「親権者変更調停」を申し立てなければなりません。調停は、家庭裁判所の調停委員を交え、親権者の変更について話し合う手続きです。

親が親権者の変更に合意し、裁判所が合意内容を適切だと判断すれば、調停が成立して親権者の変更が認められます。

また、家庭裁判所調査官による調査が行われることが一般的です。親や子どもとの面談、自宅や学校への訪問といった方法で調査が実施され、調査結果は裁判所が親権者の変更を認めるかどうかの判断材料となります。

そのため、親権者の変更を認めてもらうには、調停委員の心証を良くしたり、調査官の調査に真摯に対応することがポイントになります。

たとえば、自分が親権者としてふさわしい理由を、調停委員へ丁寧に説明するよう心がけることが重要です。また、子どもが安心して過ごせる環境が整っていると判断してもらえるよう、調査官による家庭訪問などにはしっかりと準備しておきましょう。

(3)親権者変更審判とは

親権者の変更が合意に至らない、相手方が調停に参加しないなど、調停が不成立となった場合は、自動的に「親権者変更審判」の手続きへと移行します。審判では、調査官がまとめた調査結果や、子どもの意向などを踏まえ、親権者を変更するかどうかを裁判所が判断します。

(4)調停・審判後の手続き

調停や審判で変更が認められても、親権者が自動的に変わるわけではないので注意しましょう。調停の成立日または審判の確定日から10日以内に、新しく親権者となった人が市区町村に届け出なければなりません。

届け出先は、子どもの本籍地や届け出をする人の所在地にある市区町村役場です。親権(管理権)届や調停調書謄本(審判の場合は審判書謄本)、戸籍謄本などを提出しますが、ほかにも必要書類がないか事前に役場へ確認しておきましょう。

(5)裁判所の手続きなしで親権者を変更できる場合

原則として、親権者を変更する場合は調停や審判を経なければなりませんが、例外的なケースもあります。たとえば、次のような場合は、まず母親が親権者となりますが、親同士の合意だけで親権者を父親に変更することが可能です。

  • 未婚の女性が産んだ子ども(非嫡出子)の親権者を認知した父親に変更する
  • 離婚後に生まれた子どもの親権者を父親に変更する

(6)親権変更が認められやすいケース

裁判所は、親権者の変更を認めるかについて、単に親権が欲しいという親の希望ではなく、変更が子どもの利益(福祉)となるかどうかを重視して判断します。たとえば、次のような状況にある場合、裁判所が親権者の変更を認める可能性が高いと考えられます。

  • 子どもが親権者から虐待や育児放棄を受けている
  • 親権者の健康状態が悪化し、子どもの養育ができない
  • 親権者が死亡した、行方不明となっている
  • 海外転勤になった、転職で多忙になったなど、養育環境が大きく変化した

なお、子どもが15歳以上の場合、裁判所が子どもの意向を確認します。子どもが親権者の変更を希望していれば、変更が認められる可能性も高くなるでしょう。

(7)親権の変更が認められにくいケース

繰り返しになりますが、親権者の変更はあくまでも子どもの利益になるかを踏まえて判断されます。そのため、親の一方的な考えや身勝手な理由では、親権者の変更が認められる可能性は低いです。

たとえば、早く離婚することを優先し、あまり考えないで親権を譲ってしまったような場合です。親権を譲らなければよかったと離婚後に考え、親権者の変更を求めても、認められる可能性は低いと考えられます。

また、親権者が面会交流に関する約束を守ってくれない場合、親権者を自分に変更したいと考える方もいるでしょう。ただし、約束を破られていても、子どもの養育環境に問題がなければ、親権者の変更が子どもの利益にはならないと判断される可能性があります。

(8)離婚でお困りの際は弁護士に相談を

財産分与や養育費、親権といった離婚に関するお悩みはもちろん、親権者の変更など離婚後に発生した問題も、ぜひ弁護士にお任せください。

特に、相手方が親権者の変更に反対している場合は、自分の方が親権者にふさわしいと調停や審判で認めてもらう必要があります。弁護士であれば、現在の状況が有利か不利かを判断できますし、調停委員とのやり取りや調査官による調査への対応方法などをアドバイスできます。

また、代理人として調停や審判に出席し、親権者を変更すべき理由などを法的な視点から主張してくれるので、変更が認められる可能性が高まるでしょう。

また、相手方が変更に反対していなくても、必要書類の作成や提出など、調停の申し立てには煩雑な手続きが必要です。自身で手続きするのが難しい場合や、スムーズに手続きを進めたいような場合は、弁護士に任せることをおすすめします。

弁護士法人プロテクトスタンスは、浮気・不倫の慰謝料請求だけでなく、養育費や親権など、離婚と子どもに関する問題も解決実績が豊富です。相手方との交渉はもちろん、調停や審判、訴訟といった裁判所での手続きにも自信がありますので、安心してお任せいただけます。

所員一同、最後まで手厚くご依頼者さまをサポートいたしますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。

この記事を監修した弁護士

弁護士
金岡 紗矢香

弁護士法人プロテクトスタンス所属 (第一東京弁護士会 No. 56462)

早稲田大学法学部を卒業後、国内大手飲料メーカー勤務などを経て中央大学法科大学院法務研究科を修了(70期)。弊事務所に入所後は子育てをしながら弁護士として活動し、浮気・不倫の慰謝料請求や離婚・男女問題などの分野で活躍中。

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