Q.養育費が支払われません!何か手段を教えてください。

養育費を回収する方法を解説します

A.離婚の際に取り決めた養育費が支払われないというご相談は少なくありません。

2016年の厚生労働省の調査によれば、「一度も養育費が支払われないケース」は全体の56%、「最初は支払われていたがその内に支払われなくなったケース」も含めると、全体の約75%を占めるとされています。

話し合いでは養育費が支払われない場合、強制的に相手の財産から養育費を回収するには、いくつかの方法があります。

(1)私文書(メールやLINEのトーク画面などを含む)や口頭での合意

残念ながら、強制的かつ速やかに養育費を回収することはできません。

この場合、家庭裁判所に養育費調停(まだ離婚が成立していない場合は婚姻費用分担の調停)の申し立てを行い、解決を図っていくことになります。

(2)強制執行認諾付公正証書、和解調書、判決、審判書がある場合

強制的に相手の財産を差し押さえ、回収することができる強制執行という手続を裁判所に申し立てることができます。

しかし、強制執行の手続きを行うためには、次の2つをクリアしなければなりません。


  1. 公正証書、和解調書などの書類が相手に届いていることが、確実であること
  2. 預貯金口座であれば銀行名・支店名、給与であれば勤務先などの情報をある程度特定すること

1.については書類作成時に、公正証書や和解調書は所定の手続きを経ないと、裁判所や公証役場から相手に郵送されない場合も多く、強制執行手続きの際に、あわてて郵送手続きをするケースもあるので注意が必要です。書類が届いていれば、「送達証明書」という書類を申請・取得します。

2.については、離婚していたとはいえ、一緒に暮らしていた時がありますし、離婚時に財産分与の話し合いを行った際の資料が参考になるはずです。

また、2020年の民事執行法の改正により、裁判所に「財産開示手続」あるいは「第三者からの情報取得手続」を申し立てることで、相手の財産の調査をすることが容易になりました。

なお、2.で養育費が和解調書など裁判で決められた場合には、裁判所から相手に対して養育費の支払いを命じる「履行勧告」という手続きもあります。履行勧告は裁判費用がかからず手続きも簡単ですが、強制力はありません。

養育費は、子どもが成育していくために必要不可欠ではある一方、その未払いが社会問題となっています。

2020年の民事執行法の改正以外にも、地方自治体によっては、未払い者の氏名を公表することを検討しているところもあるようです。

養育費の未払いの法的手続きは、裁判所を通す手続きでもあるため、決して簡単ではありません。

もしも、手続に失敗した場合、相手が財産を隠してしまう可能性もあります。そのため、弁護士に依頼することをお勧めします。