コンテンツまでスキップ

慰謝料・離婚の法律用語集

円満調停[えんまんちょうてい] とは?

夫婦関係が悪化して当事者間での話し合いが難しくなった際に、もとの円満な夫婦生活に戻ることを目的として、家庭裁判所に調停を申し立てて解決を図る手続きのことです。

意味
弁護士 金岡紗矢香
弁護士 金岡紗矢香
解説

0.夫婦関係をやり直すための公的な手続きがある

夫婦関係がうまくいかなくなり、当事者同士や家族を交えた話し合いだけでは修復が難しくなったとき、第三者を交えて解決を図る公的な手段として、家庭裁判所への調停の申し立てがあります。

家庭裁判所で扱う夫婦間のトラブルに関する調停は、総称して「夫婦関係調整調停」と呼ばれます。そして、この調停には大きく分けて2つの種類があります。

1つは離婚を前提とした話し合いを行う「離婚調停」、もう1つが、壊れかけた夫婦関係を見直し、もとの円満な婚姻生活に戻ることを目的とした「円満調停」です。

「調停」と聞くと離婚をイメージする方が多いかもしれませんが、実はもう一度やり直すための公的な話し合いの場が用意されているのです。

「夫婦の話し合いが平行線をたどっているけれど、離婚はしたくない」「もう一度やり直すきっかけがほしい」と悩んでいる方にとって、円満調停は有効な選択肢となり得ます。

円満調停の説明図

1.円満調停とはどのような制度か?

円満調停は、裁判所という厳格な場所で行われるものの、決して「白黒をつける裁判」ではありません。調停委員(裁判官や弁護士がなることが多い)が間に入り、夫婦双方の言い分を公平に聞きながら、関係修復に向けた合意を目指す「話し合いの場」です。

調停の席では、夫婦が直接顔を合わせて言い争うことは原則としてありません。待合室は別々に用意され、調停室には交代で入って調停委員と話をします。

そのため、相手の感情的な態度に怯えることなく、自分の気持ちや希望を冷静に伝えることができます。

調停委員は、夫婦が不仲になった原因(価値観の不一致、コミュニケーション不足、親族との関係、金銭問題など)を整理し、どうすればお互いが歩み寄れるか、具体的な解決策を一緒に考えてくれます。

制度名主な目的目指すゴール
円満調停夫婦関係を修復し、円満な婚姻生活に戻る同居の再開、関係改善ルールの策定、婚姻費用の分担など
離婚調停夫婦関係を解消し、円滑に別れる離婚の合意、財産分与、親権、慰謝料の決定など

2.【メリット】なぜ円満調停が有効なのか?

婚姻関係にある夫婦には、「同居、協力及び扶助の義務」が定められています(民法第752条)。円満調停は、この法的な義務にもとづいて、破綻しかけている関係を是正していくための手続きです。

そして、円満調停を利用することには、以下のようなメリットがあります。

2-1.感情論を排除して、冷静な対話ができる

先ほど述べたように、調停では、夫婦が同じ部屋で直接話し合うことは原則的にありません。待合室は別々に用意され、交代で調停室に入り、調停委員を介して話を進めます。

そのため、相手の威圧的な態度や感情的な暴言に怯えることなく、自分の意思を主張することができます。

2-2.相手の本音と不仲の原因を特定できる

直接のLINEや電話は無視する相手であっても、裁判所からの呼出状が届くと、多くの人が調停に出席します。そして、第三者が間に入ることで、当事者同士では隠されていた本当の不満(金銭感覚のズレ、育児方針、義実家との関係など)が浮き彫りになるのです。

2-3.法的拘束力のある調停調書が作成される

調停での話し合いがまとまると、裁判所により調停調書が作成されます。これには確定判決と同じ強い法的拘束力があります。

たとえば、「〇年〇月までに同居を再開する」とか「生活費(婚姻費用)として毎月〇万円を支払う」といった約束ごとに法的な拘束力を持たせることができます。

3.円満調停の具体的な手続きの流れ

家庭裁判所への申し立てから終了までは、一般的に以下のようなステップを辿ります。

3-1.必要書類の準備と申し立て

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、夫婦関係調整調停(円満)の申立書を添付書類と一緒に提出します。

必要書類
・夫婦関係調整調停(円満)の申立書
・夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
・事情説明書(夫婦関係調整/子どもについて)
・進行に関する照会回答書 など
費用
・収入印紙1,200円分。
・連絡用の郵便切手代(各裁判所によります)

3-2.調停期日の実施と期間の目安

申し立てから約1~2か月後に第1回目の調停が行われます。調停全体としては、おおむね3~5回程度(期間にして約3か月~半年)で結論が出ることが多いです。

3-3.調停の終了(3つの結末)

円満調停の終わり方は、夫婦の状況や話し合いの進み具合によって、3つのパターンに分かれます。

成立:
復縁に合意し、調停調書を作成して終了します。
取下げ:
調停の過程で自主的に同居が再開したような場合、申し立てを終了させます。
不成立:
相手の離婚の意志が固く、修復の見込みがないと裁判所が判断した場合、調停は不成立となります(これを「不調」とも呼びます)。

4.よくあるトラブル:相手が調停を欠席したらどうなる?

円満な夫婦関係の修復を望んだとしても、相手方が裁判所からの呼び出しを無視して、調停に欠席したらどうなるのでしょうか。

相手方が正当な理由なく欠席した場合、家庭裁判所から裁判所への出頭を促す履行勧告が出されたり、過料というペナルティが科されたりする建前にはなっていますが、相手方を強制的に連れてくることはできません。

実務上、相手方が2回連続で無断欠席した場合は、「話し合いによる合意の見込みがない」と判断され、調停は不成立で終了となります。

相手方に欠席された場合は、調停の場を諦め、弁護士を介した直接交渉や、次の法的手段(離婚訴訟への備えなど)へ切り替える必要があります。

5.円満調停を成功(関係修復)させるためのポイント

円満調停を望ましい形で終わらせるためには、ただ「やり直したい」と感情的に主張するだけでは逆効果です。調停委員を味方につけ、相手の心を動かすための戦略が必要です。

5-1.自分の非を認め、改善策を具体的に示すこと

不仲の原因が自分にもある場合は素直に認め、今後どのように改めるのかを調停委員に具体的に提示してください。

たとえば、「心を入れ替えて頑張ります」とか「これからは家事を手伝います」では、相手に響きません。「週に3日は定時で退社し、水曜と土日の洗濯・お風呂掃除を私が担当します。」というように、数字や行動ベースで復縁プランを提示することが信頼回復の鍵です。

また、モラハラ的な言動、家事の放棄、執拗な束縛などが自分側にもある場合、調停委員の前で素直に認め、反省の意を示すことが必要です。「相手が100%悪い、自分は被害者だ」という態度は、調停委員に対して「頑固で歩み寄る気がない」という印象を与え、早期に調停が不成立とされる原因にもなります。

5-2.調停委員に味方になってもらうこと

調停委員に対して感情的に怒りをぶつけたり、相手の悪口ばかりを言ったりするのは逆効果です。誠実で冷静な態度を保ち、「復縁への強い熱意と柔軟性」をアピールすることが大切です。

調停委員は神様ではありません。時にはあなたにとって耳の痛いアドバイスをしてくることもあります。

ここで色をなして反論したり、不機嫌になったりすると、「家庭内でもこのように感情的になる人なのだろう」と推測されてしまいます。冷静で、礼儀正しい対話を心がけるようにしましょう。

5-3.弁護士などの専門家に相談すること

調停は自分一人でも進めることは可能ですが、相手方が弁護士を立ててきたり、法的な主張(婚姻費用の請求など)が絡んだりする場合は、早い段階で離婚・夫婦問題に強い弁護士へ相談・依頼することを検討してください。

6.婚姻費用分担請求の同時申し立てを

別居中に円満調停を申し立てる場合、実務上非常に重要となるのが、「婚姻費用分担調停(生活費の請求)」の同時申し立てです。

法律上、夫婦は離婚が成立するまで、生活費を分担する義務があります。円満調停と同時に婚姻費用を請求することで、相手方に対して「別居を続ける限り、毎月生活費を払い続けなければならない」という経済的・心理的なプレッシャーを与えることができます。

これが、「それなら早く同居を再開してやり直した方がいい」と、相手を円満に向けた話し合いのテーブルにつかせる動機付けになることもあるのです。

7.【デメリット】円満調停のリスク

調停期日は1回あたり約2~3時間かかり、1か月に1回程度のペースで進行します。平日の昼間に裁判所に赴かなければならないため、仕事や家事育児との調整が必要になります。

また、こちらが円満な夫婦関係の修復を求めて申し立てても、相手方が「これを機会に離婚したい」と強く主張し、調停が離婚に向けた条件交渉の場に実質的になってしまうケースもあります。そして、調停の不成立後に改めて相手方から離婚調停や離婚訴訟を起こされてしまえば、最終的に法廷で離婚の可否を争うことになります。

このように、円満調停からスタートしても、最終的に離婚訴訟へと発展する可能性があるため、最初から慎重な対応が求められます。

8.円満調停を弁護士に依頼すると

円満調停は自分一人で行うことも可能ですが、弁護士に依頼することで、次のようなメリットがあります。

・調停に同席してもらえる
当日、弁護士が一緒に調停室に入り同席しながらサポートするため、緊張してうまく話せなくなるリスクを防ぐことができます。
・調停委員への説得力が格段に上がる
法律のプロとして、客観的事実にもとづいた説得力のある書面を裁判所に提出できます。
・不利な離婚への誘導を防ぐ
相手方が突然離婚を突きつけてきたり、不利な条件を提示してきたりしても、その場で防御したり、反論することができます。

円満調停は、壊れかけた夫婦の溝を埋めるための「最後の話し合いのチャンス」です。しかし、一歩間違えると意図しない離婚への引き金になりかねない諸刃の剣でもあります。

相手の反発が予想される場合や、すでに別居中で婚姻費用(生活費)の不払いが起きている場合などは、申し立てを行う前に、まずは夫婦問題・離婚問題に強い弁護士へ相談し、専門家の知恵を借りることが円満への近道となります。ぜひご相談ください。