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慰謝料・離婚の法律用語集

接近禁止命令[せっきんきんしめいれい] とは?

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)にもとづき、裁判所がDVの加害者に出す保護命令の1つです。

1.DV加害者から身を守る接近禁止命令

DV加害者を被害者から引き離すための命令であり、被害者が裁判所に申し立てを行い、申し立てが認められると発令されます。接近禁止命令により、加害者に対して被害者の身辺を付きまとうことや、住居や勤務先付近を徘徊することを1年間禁止できます。

2.接近禁止命令を申し立てるべき状況

接近禁止命令は、内縁関係を含む配偶者や元配偶者からの暴力や脅迫に苦しんでいる方が申し立てることができます。生命や心身に重大な危害を受ける可能性がある場合は、接近禁止命令を申し立てたほうが良いでしょう。

特に申し立てたほうが良いのは、日常的に暴力や脅迫を受けている場合や、家から逃げ出したのに引っ越し先や勤務先まで追いかけられてきたような場合です。被害者から加害者を遠ざけ、追いかけてくる可能性も低くなるため安心です。

3.命令に従わないときのペナルティ

加害者が接近禁止命令に違反した場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されます(DV防止法第29条)。
加害者が命令に背いて近づいてきたなど身の危険を感じることがあれば、すぐに警察へ通報するようにしましょう。

4.メールや電話、子どもへの接近などは禁止できない

接近禁止命令が発令されても、加害者からのメールや電話、手紙による一方的な連絡、子どもや親族への接近などを禁止することはできません。電話やメールで暴言、脅迫を受けている、子どもや親族に危害が及ぶ危険性がある場合などは、次のような保護命令も申し立てることができます。

  • 電話等禁止命令
  • 子への接近禁止命令
  • 子への電話等禁止命令
  • 親族等への接近禁止命令

ただし、これらの保護命令は単独で発令されるものではありません。接近禁止命令の発令と同時か発令後に、これらの保護命令も発令されることになります。

このほか、加害者と同居している場合、「退去命令」を申し立てることができます。

退去命令が認められると、加害者に対して原則として2か月間(同居していた建物が被害者の単独所有または貸借の場合は6か月間)、家から出ていくよう命じ、家の付近をうろつくことを禁止できます。加害者との同居を解消するために引っ越しの準備が必要といったようなケースで利用できます。

5.接近禁止命令が認められる条件

接近禁止命令の発令には、被害者からの申し立てが必要です。そして、申し立てが認められるには以下の要件を満たす必要があります。

  • 配偶者から身体に対する暴力、または生命、身体に対する脅迫、または自由、名誉、財産に対する脅迫を受けた
  • 更なる身体に対する暴力、または生命、身体に対する脅迫、または自由、名誉、財産に対する脅迫を受けることにより、生命、心身に対する重大な危害を受けるおそれが大きいとき

なお、元配偶者や元パートナーに対する接近禁止命令を申し立てることも可能です。ただし、婚姻期間中や同棲中は被害を受けておらず、離婚後や同棲解消後に暴力や脅迫などが始まった場合は、申し立てが認められない可能性があります。

6.接近禁止命令を申し立てる手続きの流れ

申し立てる手続きの流れは、次の順番で進めることが一般的です。

  1. 配偶者暴力相談支援センター、または、警察への相談
  2. 裁判所への申し立て
  3. 口頭弁論または審尋期日
  4. 接近禁止命令の発令

申し立ての準備として、各都道府県にある配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)または警察に相談しておきましょう。なぜなら、接近禁止命令の申立書の記載事項の中に、これらの相談機関に対して相談した事実を記載するのが原則だからです。

次に、申し立て先は以下のいずれかを管轄する地方裁判所(地裁)になります(同法第11条)。

  • 相手方(配偶者/加害者)の住所の所在地
  • 申立人(被害者)の住所または居所の所在地
  • 配偶者からの身体に対する暴力または生命等に対する脅迫が行われた地

そして、裁判所での口頭弁論または期日を経て、接近禁止命令を発令するか、申し立てを却下するかの決定が下されます。

接近禁止命令が発令されると、地方裁判所から配偶者暴力相談支援センターや管轄の警察への通知や、加害者への決定書の送達などが行われます。

接近禁止命令の効力は1年間です。この期間を過ぎてもまだ危害が及ぶおそれがある場合、接近禁止命令を再度申し立てることができますし、申し立て回数にも制限はありません。

ただし、配偶者暴力相談支援センターや警察など専門機関への相談、裁判所への申し立てなど、必要な手続きを改めて行う必要があります。

7.接近禁止命令の注意点

接近禁止命令にはさまざまな注意点があります。

・証拠の準備が必要

接近禁止命令を発令するにあたり、裁判所は提出された証拠にもとづいて判断します。そのため、暴力や脅迫を受けたことを示す客観的な証拠が必要です。
たとえば、医師の診断書や暴力で負った外傷の写真、脅迫されているときの音声や動画などを保存しておくとよいでしょう。

・加害者に新しい住所を知られないようにする

離婚後の引っ越し先などを加害者に知られてしまうと、危害が及ぶ可能性があります。市役所に住民票などの交付制限を申し出ることで、住民票の取得により住所を調べられてしまうのを防止できます。

・偶然会った場合は違反ではない

街で偶然、加害者に会ってしまっても、接近禁止命令の違反にならないことに注意が必要です。
ただし、偶然の遭遇をきっかけに加害者が声をかけてきたり、付きまとったりしてくることも考えられます。このような場合は、命令違反に該当する可能性があるので、危険を回避するためにも速やかに警察などに相談しましょう。

・加害者が命令を守るとは限らない

接近禁止命令が発令されても油断は禁物です。接近禁止命令を加害者が守らない可能性も考えられます。
そのため、「加害者の行動範囲に近づかない」「夜、ひとりで外出することは控える」「共通の友人との接触を避ける」など、慎重な行動を心がけましょう。

8.接近禁止命令を検討している方は弁護士に相談

配偶者やパートナーからの暴力や脅迫で身の危険を感じたら、早急に警察に通報しましょう。接近禁止命令を申し立てる場合は、事態を早期に収拾するため弁護士への相談をおすすめします。

接近禁止命令の申し立ては緊急な対応が必要なうえ、認めてもらうには客観的な証拠が重要です。また、申立人になれるのは被害者本人または代理人弁護士だけなので、親族や友人が手続きを進めてあげることはできません。

弁護士であれば、さまざまなアドバイスをするだけでなく、代理人として手続きを進めてくれるので、命令が迅速に発令されることが期待できます。

もし、配偶者が離婚に応じてくれないなど離婚問題に発展した場合、暴力的な配偶者と直接話し合うことは非常に困難です。早期解決のためにも弁護士に依頼しましょう。

離婚の請求だけでなく、DVを受けたことへの慰謝料の請求なども任せることができます。

弁護士法人プロテクトスタンスでは、多くの方から離婚問題・男女トラブルの相談・ご依頼をお受けしており、解決実績が豊富です。これまでに培った経験を活かし、ご依頼者さまの希望に沿った最適な解決策をご提案いたしますので、お困りの際はいつでもご連絡ください。