慰謝料・離婚の法律用語集
- 保護命令[ほごめいれい] とは?
配偶者やパートナーの暴力または脅迫から、被害者の生命や身体などを守るために裁判所が出す命令です。加害者に対して被害者身辺の付きまといを禁止したり、同居している住まいからの退去を命じたりするなど、さまざまな種類の命令があります。
1.状況に応じて必要な保護命令を選択する
DVの被害者を守るために発令されるもので、正式には「配偶者暴力等に関する保護命令」といいます。
被害者の申し立てにより、裁判所が加害者に対して一定の行為を禁止します。保護命令には次のような種類があり、被害者の状況などに応じて申し立てる命令を選択します。
種類 内容 接近禁止命令 加害者に対して被害者の身辺への付きまとい、被害者の住居・職場などでの徘徊を1年間禁止する 退去命令 被害者と共に住む住居から退去することを命じ、当該住居の付近を徘徊することを2か月間禁止する(対象となる住居を被害者のみが所有・賃借している場合は6か月間) また、電話やメールなどで加害者から暴言または脅迫を受けている場合や、子どもや親族などに危害が及ぶ恐れがあるような場合、次の保護命令を申し立てることができます。
種類 内容 電話等禁止命令 面会の要求や監視の告知、著しく粗野・乱暴な言動、無言電話、緊急時以外の電話やFAX、メールなどによる連続した連絡、GPSによる位置情報の取得などを禁止する 子への接近禁止命令 被害者と同居する未成年の子どもに対するつきまといや、住居、学校の付近を徘徊する行為などを禁止する 子への電話等禁止命令 被害者の子どもに対する監視の告知、著しく粗野・乱暴な言動、無言電話、緊急時以外の電話やFAX、メールなどによる連続した連絡、GPSによる位置情報の取得などを禁止する 親族等への接近禁止命令 被害者の親族などに対するつきまといや、住居、勤務先などの付近を徘徊する行為を禁止する 電話等禁止命令や、子や親族等への接近禁止命令は被害者への接近禁止命令の要件を満たすことが必要です。また、単独では発令されず、被害者への接近禁止命令の発令と同時か発令後に発せられます。さらに、命令期間は、接近禁止命令が発令されている期間中に限られます。
2.保護命令の創設と拡充
保護命令は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」にもとづいています。この法律は2001年4月に成立し、同年10月から施行されました。
DV防止法は配偶者による暴力の防止や被害者の保護を目的としており、その一環として保護命令の制度が新設されました。保護命令は、数回にわたる法改正を通じ、元配偶者からDVを受けていた被害者や、生命などに対する脅迫を受けた被害者を保護の対象に加えるなど、制度の拡充を続けてきました。
そして、申し立てができる被害者のさらなる拡大、接近禁止命令の有効期間の伸長、命令に違反した加害者に対する罰則強化など、保護命令をさらに拡充する法改正が2024年4月に施行されました。
3.保護命令のメリット
DVの被害者が保護命令を申し立てることには、さまざまなメリットがあります。
・加害者を遠ざけ、暴力や脅迫から身を守ることができる
接近禁止命令や電話等禁止命令が発せられると、配偶者へ接近することや電話をかけることが禁止されます。加害者と同居中の場合、退去命令が発せられれば、加害者は住まいからの退去が命じられます。
加害者が命令に従わず、被害者に接触するなど違反行為をした場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されます(DV防止法第29条)。
保護命令は違反すると厳しい罰則が科される強力な制度です。加害者を遠ざけて暴力や脅迫を防止できるので、被害者にとって保護命令により得られる安心感は大きいでしょう。
・子どもなどの安全も確保できる
子への接近禁止命令や電話等禁止命令も発令されると、加害者が子どもへの接近や、電話やメールなどによる連絡なども禁止されます。また、親族等への接近禁止命令も発令されれば、親族への付きまといなども禁止されるため、被害者だけでなく、子どもや親族の安全も確保できます。
・離婚への転機となる
たとえば、接近禁止命令が発令されると1年間、加害者は被害者に近づけなくなります。もし、加害者との離婚を考えている場合、命令が発令されている期間中に安全な環境で離婚協議や離婚調停などの手続きを進められるでしょう。
さらに、保護命令を申し立てる際に集めた証拠や書類は、離婚調停や離婚訴訟でも有力な証拠となり、離婚が認められやすくなる可能性があります。
・離婚前でも児童扶養手当を受け取れる
児童扶養手当は離婚などでひとり親になった場合に支給されます。通常は離婚を決意していても別居だけでは児童扶養手当を受給することはできません。
しかし、保護命令が出ていれば、離婚の成立前でも手当を受給することができます。
4.保護命令を申し立てるなら弁護士に相談を
配偶者からの暴力に恐怖を感じたら、生命や心身への危険が迫る前に必要な対応を講じるようにしましょう。警察や配偶者暴力相談支援センターへの相談はもちろん、保護命令の申し立ても合わせて検討するとよいでしょう。
DVに苦しむ被害者が精神的に不安定になっていれば、親族や友人が手続きを代わってあげたいと思うかもしれません。しかし、親族や友人は手続きを代理できないので、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、申し立てに必要な書類の集め方などをアドバイスしてくれるだけでなく、本人に代わって手続きを進めることができるからです。弁護士が手続きを進めることで、保護命令が迅速に発令されることが期待できるでしょう。
さらに、配偶者への離婚請求や、DVを受けたことへの慰謝料請求に関する交渉はもちろん、調停や裁判といった裁判上の手続きも弁護士に任せられます。
弁護士法人プロテクトスタンスでは、慰謝料・離婚・男女トラブルなどの問題についてご依頼を数多く受けており、解決実績が豊富です。所員一同、心を込めたご支援と満足をお届けできるよう尽力いたしますので、お悩みの際はぜひお任せください。