慰謝料・離婚の法律用語集
法定離婚原因[ほうていりこんげんいん] とは?
離婚訴訟で離婚を認めてもらうために必要となる、法律上の離婚理由のことです。夫婦の一方が離婚に同意していなくても、民法で定められた法定離婚原因があり、裁判所が離婚を認めれば、裁判によって離婚が成立します。
意味
目次
- 0.法定離婚原因とは
- 1.法定離婚原因は4つ
- 2.法定離婚原因の内容
- 2-1.配偶者に不貞行為があった
- 2-2.悪意の遺棄
- 2-3.生死が3年以上明らかでない
- 2-4.その他婚姻を継続し難い重大な事由がある
- 3.法定離婚原因があれば、必ず離婚できるわけではない
- 4.離婚訴訟では証拠が重要
- 5.離婚訴訟を考えるなら早めに弁護士へ
0.法定離婚原因とは
離婚する方法として、大きく協議離婚、調停離婚、訴訟離婚という3つの方法があります。
協議離婚は、夫婦が話し合って離婚に合意し、離婚届を提出する方法です。調停離婚は、家庭裁判所の調停手続を利用し、調停委員を介して話し合いを進め、合意によって離婚を成立させる方法です。
協議離婚か調停離婚によって離婚するには、いずれも最終的に夫婦双方が離婚に合意しなければなりません。
これに対して裁判離婚は、話し合いや調停でも離婚が合意に至らない場合、裁判所に離婚を認めてもらう方法です。つまり、相手が離婚を望んでいなくても、裁判所が認めれば離婚が成立することになります(民法第770条1項)。
もっとも、裁判で一方的に離婚を認める以上、どのようなケースでも離婚できるわけではありません。たとえば、「気持ちが冷めた」「性格が合わない」といった事情だけでは足りず、裁判所は、民法で定められた法定離婚原因にあたる事情があるかどうかや、夫婦関係の破綻の程度などを踏まえて判断します。
そして、裁判所が裁判離婚を認める事情は法律で定められており、これを「法定離婚原因」と呼びます。また、「法定離婚事由」や「裁判上の離婚原因」とも呼ばれます。
なお、離婚訴訟は、原則として先に家庭裁判所で離婚調停を行い、それでも合意できなかった場合に提起することになります(調停前置主義)。

1.法定離婚原因は4つ
法定離婚原因として、次の4つが民法で定められています。
- 配偶者に不貞行為があった
- 配偶者から悪意で遺棄された
- 配偶者の生死が三年以上明らかでない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由がある
以前は、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」も法定離婚原因の一つとされていました。しかし、精神疾患があること自体を独立の離婚原因とするのは適切でないとの観点から、2026年4月に施行された改正民法でこの規定が削除されました。
そのため、配偶者に精神疾患があっても法定離婚原因になるわけではありません。ただし、精神疾患の影響によって夫婦関係の維持が著しく困難になっている場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかどうかが、個別の事情を踏まえて判断されることになります。
2.法定離婚原因の内容
4つの法定離婚原因は、いずれも要件や判断のポイントが異なります。実際に裁判で離婚が認められるかどうかは、個別の事情や証拠によって判断されるため、まずはそれぞれの内容を確認していきましょう。
2-1.配偶者に不貞行為があった
「不貞行為」とは、配偶者以外の者と自由な意思にもとづいて肉体関係を持つことをいいます。つまり、肉体関係を伴う浮気・不倫があった場合、法定離婚原因に該当する可能性が高いといえます。
2人で食事に行く、親密なメッセージをやり取りする、キスをするといった行為でも、「浮気・不倫にあたる」と考える方もいるかもしれません。しかし、裁判で不貞行為が認められるかどうかは、肉体関係があったと評価できるかが重要となります。
もっとも、「肉体関係があったかどうか」は、必ずしも直接的な証拠が必要というわけではありません。ホテルへの出入りを撮影した写真や、連泊の記録、肉体関係をうかがわせるメッセージの履歴など、不貞行為の存在を推認させる客観的な証拠が重視されます。
2-2.悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、正当な理由がないのに、夫婦としての同居・協力・扶助の義務(民法第752条)を果たさず、配偶者を見捨てるような行為をいいます。
典型的な例として、次のようなケースが考えられます。
- 生活費を十分に支払えるのに、長期間まったく渡さない
- 正当な理由なく家を出て、そのまま同居を拒み続ける
- 病気の配偶者を置いたまま一方的に家を出て、生活費を渡さず必要な援助をしない
ただし、家を出て行ったとしても、必ず悪意の遺棄に該当するわけではありません。配偶者による暴力や暴言から避難するための別居など、正当な理由がある場合は悪意の遺棄にあたらない可能性があります。
2-3.生死が3年以上明らかでない
配偶者が行方不明になり、生きているのか亡くなっているのかが明確ではない状態が3年以上続いている場合です。
単に連絡が取れない、居場所がわからないというだけでは足りず、生存しているかどうか自体が不明であることが必要です。たとえば、別居していて所在は分からなくても、生存していることが判明している場合は、この離婚原因ではなく、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかが問題となります。
2-4.その他婚姻を継続し難い重大な事由がある
これまでの法定離婚原因には当てはまらないものの、夫婦関係が破綻しており、婚姻を続けるのが難しい事情がある場合、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」ことを理由に、裁判離婚が認められる可能性があります。
たとえば、次のような事情が考えられます。
- DV(身体的暴力や精神的暴力を含む)やモラルハラスメント(モラハラ)が続いている
- 長期間にわたって別居しており、関係修復の見込みがない
- 夫婦関係が破綻するほど、浪費や多額の借金・ギャンブルにのめり込んでいる
- 過度に宗教活動に傾倒している
- 親族との深刻な対立により婚姻生活の継続が著しく困難になっている
また、「性格の不一致を理由に離婚したい」と弁護士に相談される方がいらっしゃいますが、単に価値観が違う、ケンカが多いというだけでは、裁判で離婚が認められるとは限りません。客観的に見て婚姻関係が破綻しており、修復の見込みがないといえるかどうかが重要です。
裁判所は、別居期間の長さ、暴力や暴言の有無、生活費の支払い状況、夫婦間のやり取りの経過などを総合的に考慮して判断します。特に、長期間の別居が続いている場合には、婚姻関係の破綻を基礎づける重要な事情になることがあります。
3.法定離婚原因があれば、必ず離婚できるわけではない
法定離婚原因にあたりそうな事情があっても、必ず離婚が認められるわけではありません。
法定離婚原因がある場合でも、裁判所がさまざまな事情を考慮して「婚姻を継続するのが相当」と判断したときは、離婚請求を退けることができます。これを「裁量棄却」と呼びます(民法第770条2項)。
たとえば、離婚原因の程度や経緯、別居の有無、婚姻期間、子どもへの影響などを踏まえて、なお婚姻を継続するのが相当と裁判所が判断すれば、離婚が認められないことがあります。
4.離婚訴訟では証拠が重要
離婚訴訟で法定離婚原因を主張する場合には、その事情を裏付ける客観的な資料や記録が重要になります。
たとえば、次のようなものが証拠となり得ます。
- 不貞行為の事実を証明する写真、メッセージの履歴、調査報告書
- DVやモラハラに関する録音、診断書、LINEの履歴、被害状況を記録した日記やメモ
- 悪意の遺棄を裏付ける生活費の不払い記録、振込履歴、別居の経緯がわかるやり取り
- 長期間の別居を示す住民票、賃貸契約書、郵便物の送付先が分かる資料
もっとも、どのような証拠が有効かは、ケースによって異なります。証拠が不十分なまま訴訟を起こすと、離婚が認められないおそれもあるため、証拠収集の段階から弁護士に相談することをおすすめします。
5.離婚訴訟を考えるなら早めに弁護士へ
離婚訴訟では、「法定離婚原因にあたるか」という法的判断だけでなく、証拠の集め方や訴訟の見通しなど、検討すべきポイントが多くあります。また、離婚の可否だけでなく、慰謝料や親権、財産分与などの問題があわせて争点になることもあります。
さらに、離婚訴訟を起こす場合、通常は先に調停を経る必要があり、調停から訴訟まで含めると解決までに長期間かかることも少なくありません。精神的・経済的な負担も大きくなりやすいため、見通しを立てたうえで進めることが大切です。
「自分のケースで裁判離婚が認められる可能性があるのか」「どのような証拠を集めればよいのか」といった不安や疑問があれば、離婚問題に詳しい弁護士へ早めにご相談ください。
