慰謝料・離婚の法律用語集
婚姻を継続しがたい重大な事由[こんいんをけいぞくしがたいじゅうだいなじゆう] とは?
裁判で離婚が認められる「法定離婚原因」の一つで、DV・モラハラ・長期別居・金銭問題など、個別の事情を総合的に考慮して裁判所が判断する包括的な離婚原因です。
意味
目次
- 0.「婚姻を継続しがたい重大な事由」は法定離婚原因の一つ
- 1.法定離婚原因における位置づけ
- 2.婚姻を継続しがたい重大な事由に当たり得る主な事情
- 2-1.長期間の別居
- 2-2.深刻な性格の不一致
- 2-3.DV(ドメスティックバイオレンス)
- 2-4.モラルハラスメント
- 2-5.家事や育児への著しい不協力
- 2-6.金銭面の重大な問題(浪費・借金など)
- 2-7.性生活上の重大な問題(セックスレスなど)
- 2-8.家庭生活に重大な支障を生じさせるその他の事情
- 3.婚姻を継続しがたい重大な事由を理由に離婚を求める際のポイント
- 3-1.破綻を示す証拠を準備する
- 3-2.有責配偶者からの離婚請求は困難
- 3-3.離婚が成立すれば慰謝料も認められるとは限らない
- 4.婚姻を継続しがたい重大な事由を理由とする離婚請求は弁護士へ相談を
0.「婚姻を継続しがたい重大な事由」は法定離婚原因の一つ
夫婦が話し合いにより離婚に合意した場合、離婚が成立します。これを「協議離婚」と呼び、双方の合意さえあれば、離婚の理由は問われません。
その一方で、話し合いで合意が得られなければ、まず家庭裁判所で離婚調停を行い、それでも解決できないときに、裁判(離婚訴訟)によって離婚の可否が判断されます。
しかし、裁判で離婚を認めてもらうためには、民法で定められた「法定離婚原因」が必要であり、そのうちの一つが「婚姻を継続しがたい重大な事由」です。
1.法定離婚原因における位置づけ
法定離婚原因として、次の4項目が民法で定められています(民法第770条)。
- 配偶者に不貞な行為があった
- 配偶者から悪意で遺棄された
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由がある
このうち「婚姻を継続しがたい重大な事由」は、不貞行為や悪意の遺棄のように明確な要件が定まっているわけではありません。婚姻関係や生活状況、別居期間、トラブルの内容・程度などを総合的に考慮して、「婚姻生活の継続が困難か」を判断するための包括的な考え方です。
そのため、不貞行為や悪意の遺棄などの事情がなくても、離婚が認められる可能性があります。たとえば、長期の別居、深刻なDV(ドメスティックバイオレンス)やモラハラ(モラルハラスメント)、金銭問題などにより、婚姻関係が回復不能な程度に破綻していると認められたような場合です。
なお、以前は「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」も法定離婚原因とされていましたが、2026年4月に施行された改正民法により削除されました。
この点、精神疾患により夫婦の協力関係が途絶え、婚姻生活の維持が著しく困難になっている場合には、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として個別具体的に判断されることになります。

2.婚姻を継続しがたい重大な事由に当たり得る主な事情
「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するかどうかは、個別の事案ごとに総合的に判断されます。具体的には、婚姻関係の破綻を裏付ける事情として次のような事情が問題となります。
2-1.長期間の別居
長期間の別居は、婚姻関係の破綻を示す代表的な事情の一つです。夫婦が同居・協力して生活するという婚姻の本質が失われているため、別居期間が長期に及ぶほど婚姻関係の回復可能性は低いと評価されやすくなります。
特に、別居開始後に生活費のやり取りもほとんどなく、双方に関係修復の意思がない場合には、婚姻関係が破綻していると判断され、離婚が認められる可能性が高くなります。
もっとも、単に別居しているだけでは足りません。別居に至った経緯、別居期間の長さ、修復のための努力の有無、子どもの状況など、さまざまな事情が総合的に考慮されます。
2-2.深刻な性格の不一致
性格の不一致自体は多くの夫婦に見られる一般的な問題なので、それだけで直ちに法定離婚原因になるわけではありません。
しかし、価値観の違いから日常的な衝突が絶えず、精神的苦痛が長期に及んでいるため、共同生活が事実上成り立たない状況もあるでしょう。このような場合、婚姻関係が修復困難と評価され、「婚姻を継続しがたい重大な事由」が存在すると認められる可能性があります。
重要なのは、単に「性格が合わない」という主観的な感覚ではなく、客観的に見ても婚姻関係が破綻しているといえるかどうかです。
2-3.DV(ドメスティックバイオレンス)
配偶者からの暴力は、婚姻関係の根幹である信頼を著しく損なう重大な問題です。
身体的な暴力だけでなく、暴言や脅迫などの精神的な暴力、生活費を渡さないなどの経済的な暴力もDVに含まれます。特に、暴力や脅迫を継続的に受けていれば「婚姻を継続しがたい重大な事由」として認められる可能性が高いといえます。
2-4.モラルハラスメント
人格を否定する言動、無視や過度な束縛、社会的な孤立を強いるなど、精神的な苦痛を与える行為も、婚姻関係の維持を困難にする事情です。
- 人格を否定する発言を繰り返す
- 家族や友人との交際を禁じるなど社会的に孤立させる
- 収入や生活費を一方的に管理して経済的な自由をほとんど与えない
上記のような状態が長期にわたって続いている場合、「婚姻を継続しがたい重大な事由」と認定される余地があります。
2-5.家事や育児への著しい不協力
夫婦には、互いに協力して家庭生活を営む義務があります(民法第752条)。
一方の配偶者が長期間にわたり、家事や育児をほとんど担わず負担を一方的に押し付け、共同生活が成り立たないほど協力関係が失われている場合、婚姻関係の維持が困難と評価されることがあります。
そのため、単に家事分担の割合に不満があるという程度では足りません。
2-6.金銭面の重大な問題(浪費・借金など)
生活費を渡さない、過度な浪費を繰り返す、ギャンブルや投資などにより、無断で多額の借金を重ねるといった金銭問題は、信頼関係の破壊に直結します。
改善の努力が見られず長期間にわたって問題行動が続いている場合には「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると判断される可能性があります。
2-7.性生活上の重大な問題(セックスレスなど)
合理的な理由なく配偶者が長期間にわたり性交渉を拒否し続ける場合、婚姻関係の破綻を示す事情として考慮されることがあります。
ただし、病気や心身の不調、仕事の事情など正当な理由がある場合には離婚原因と評価されないことも多く、個別の事情を踏まえた判断が必要です。
2-8.家庭生活に重大な支障を生じさせるその他の事情
そのほかにも、次のような事情が重なっている場合には「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するかどうかが問題となることがあります。
- 働く能力があるにもかかわらず正当な理由なく就労を拒み続け、生活費も負担しないなど著しく怠惰な生活態度が継続している(無為徒食)
- 宗教活動に過度に没頭し、家庭生活をほとんど顧みない、家計を著しく圧迫する、信仰を家族に強制するといった状態になっている
- 配偶者の家族との深刻な対立が続き、同居を続けることが客観的に困難であるにもかかわらず、配偶者が問題解決に協力しない
- 重大な犯罪行為や長期間の服役により、家庭生活の維持が著しく困難になっている
いずれの場合も、これらの事情があるだけで直ちに離婚原因となるわけではありません。家庭生活への影響が重大であり、婚姻関係が破綻しているかどうかが総合的に判断されます。
3.婚姻を継続しがたい重大な事由を理由に離婚を求める際のポイント
「婚姻を継続しがたい重大な事由」を理由に離婚を求める場合、単に「夫婦仲が悪い」「気持ちが冷めた」と主張するだけでは足りません。裁判では、婚姻関係が破綻しており修復の見込みがないことを、客観的な証拠にもとづいて説明する必要があります。
3-1.破綻を示す証拠を準備する
裁判では、離婚原因が存在することを主張する側がその事実を証明しなければなりません。
たとえば、次のような証拠が有効だと考えられます。
- 別居の事実を示す住民票や賃貸契約書
- 暴言や脅迫の録音・メッセージ履歴
- DVや精神的被害に関する医師の診断書や怪我の写真、相談記録
- 生活費の不払いや浪費、借金の状況を示す通帳やカード明細
裁判所は「まだ関係修復の余地があるのではないか」という観点から慎重に判断する傾向があります。そのため、単発の出来事だけでなく、長期間にわたる経緯や生活実態を丁寧に整理して主張することが求められます。
3-2.有責配偶者からの離婚請求は困難
不貞行為やDVなど、婚姻関係を破綻させる主な原因を作った配偶者を「有責配偶者」といいます。
有責配偶者が「婚姻を継続しがたい重大な事由」などを理由に離婚を求めること自体は可能ですが、簡単には認められません。
最高裁判所は、極めて長期の別居が続いている、未成熟子がいない、相手方が過酷な状況に置かれないなど、厳しい条件を満たす場合に、有責配偶者からの離婚請求が認められるという判断を示しています。
有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできないものと解するのが相当である。
自分が有責配偶者に当たる可能性がある場合、見通しを含めて慎重に検討する必要があります。
3-3.離婚が成立すれば慰謝料も認められるとは限らない
「婚姻を継続しがたい重大な事由」を理由に離婚が成立しても、当然に慰謝料の請求が認められるわけではありません。慰謝料が認められるには、相手方に違法な行為や有責性があり、その行為によって精神的苦痛を受けたことが必要です。
DVやモラルハラスメントといった悪質な行為があれば、慰謝料請求が認められる可能性があります。しかし、性格の不一致や価値観の違いなど、必ずしも相手方に責任があるとはいえない事情によって婚姻関係が破綻した場合、慰謝料が認められないことも少なくありません。
「離婚できるかどうか」と「慰謝料が認められるかどうか」は別の問題として考えることが大切です。
4.婚姻を継続しがたい重大な事由を理由とする離婚請求は弁護士へ相談を
「婚姻を継続しがたい重大な事由」を理由とする離婚請求は、個別具体的な事情を踏まえて総合的に判断されます。そのため、裁判で離婚が認められる可能性を見通すには法的な専門知識が求められます。
また、適切な主張と十分な証拠がなければ裁判で離婚が認められないことも多く、事前の見通しが重要です。
自分の事情が「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たるか、どのような証拠を集めるべきか、有責配偶者に当たる可能性があるかなど、検討すべきポイントは多岐にわたります。不安や疑問があれば、離婚問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
