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慰謝料・離婚の法律用語集

強制認知[きょうせいにんち] とは?

婚姻関係にない男女間に子どもが生まれた場合、父親が認知に協力(任意認知)してくれないときは、家庭裁判所の手続きを利用して、強制的に法律上の父子関係を確定させることができます。これを強制認知または裁判認知と呼びます。

(1)まずは認知調停を申し立てる

最初から家庭裁判所に認知の訴えを提起することはできません。先に認知調停を申し立てる必要があります。これは離婚と同じ趣旨です(調停前置主義)。

もちろん、子どもはまだ小さいでしょうから、子どもの法定代理人である母親が、相手方となる父親の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることになります。

認知調停では、相手方の男性が父子関係を認めて合意できれば、裁判所が合意に相当する審判を下し、審判書が作成されます。
そして、その審判書謄本および確定証明書を持って、父親あるいは子どもの本籍地、届出人の所在の市区町村役場の戸籍課に行き、認知届を提出します。

しかし、男性が認めない場合は、申立人である女性側が、妊娠・出産した子どもの父子関係を証拠によって証明(立証)しなければなりません。そこで利用されるのがDNA鑑定です。

(2)認知調停で解決できない場合

しかし、そもそも男性が裁判所からの呼び出しを無視して、調停期日に出頭しなかったり、DNA鑑定に協力しなかったりすることがあります。

また、DNA鑑定により父子関係が証明されたにもかかわらず、認知届を提出しなかったり、裁判所による認知の審判に異議を申し立てるなど、調停手続では解決できないことがあります。
このような場合、認知の訴え(認知請求訴訟)を提起する必要があります。

(3)認知の訴えにより最終的な解決を図る

認知の訴えでは、裁判官がDNA鑑定の結果やその他の客観的な証拠、妊娠・出産にいたる経緯や当事者の主張などを調べたうえで、父子関係を認めるか否か判決を言い渡します。

たとえ男性が親子関係を否定したとしても、裁判所は認知請求を認めることができますし、男性にDNA鑑定を拒否された場合であっても、理由もなく鑑定を拒否する態度そのものが認知請求を肯定する方向に働く場合もあります。

(4)DNA鑑定の費用

DNA鑑定の費用については、父子関係を立証する側である女性があらかじめ裁判所に納めなければなりません。
しかし、判決で「訴訟費用は被告の負担とする」と言い渡された場合、被告(男性)に請求できます。

(5)判決が確定した後の手続き

男性側が判決の内容に不服がある場合、判決書送達後14日以内であれば、控訴される可能性もあります。
しかし、控訴されなかった場合は、そのまま判決が確定します。

女性側は、判決確定後10日以内に判決書謄本判決確定証明書その他必要書類を添付して、市区町村役所に認知届を提出すれば、認知の手続きは完了します。

なお、認知の訴えは、父親が生存している限り、いつでも提起することができます。
仮に、父親が死亡した場合であっても、その死後3年以内であれば、認知の訴えを提起することは可能です(民法第787条)。